今回はおすすめの青年漫画を厳選して紹介していきます!
歴史物からラブコメ、サバイバルものや不良ものまで様々なタイプの青年漫画を集めてみました。
どの青年漫画も面白いものばかりで、中には役立つ豆知識もあったりと様々な楽しみ方ができます。
どれも人気の青年漫画ばかりなので、ぜひ参考にしてみて下さい。
おすすめ青年漫画100選
OUT
半グレ達による命を懸けた闘争を描いたダークな漫画!
約半年間の少年院生活から解放された主人公・井口達也は再び地元の悪友たちと悪さをさせない為に距離を話す意味をこめて、地元から離れた西千葉で生活することになった。その焼肉店「三塁」を営む親戚がいるので、そこで手伝いをしながら生活することになる。悪い仲間と距離もあるので「更生できるかも」と期待する井口。しかし、どこにでも同類はいるようで立ち寄ったコンビニで暴走族「斬人」の副総長・安倍要と出会う。そこで出院初日なのにタイマンで喧嘩をしてしまう!喧嘩には勝ったのはよいが、これがばれると少年院に逆戻り。それだけは絶対嫌な井口と、喧嘩に負けたことを知られたくない安倍は、利害が一致したので今回の喧嘩を秘密にすることになる。しかし、これをキッカケに半グレ達の闘争へと巻き込まれていく。
主人公・井口達也の少年院時代の話がリアルすぎるなと思いながら読んでいたら実は原作者の実体験である事をあとで知りました。少年院で罰を与えられると、その人が嫌がることを徹底的に研究してさせるようで他の不良がでてくる漫画よりここだけは変にリアルなので、ぜひ読んでもらいたいシーンです。また、主人公がケンカしてしまう心理状態も原作者の体験が元になっているので少年院に入ってしまうほどケンカをする側の気持ちがわかるので不良がでてくる漫画に嫌悪感を覚えるような人はぜひこのあたりを読んで欲しいです。納得できるかは別として「そういう気持ちなのか」とわかるので楽しめると思います。
青野くんに触りたいから死にたい
純愛とホラーとコメディーと狂気を味わえる
高校2年生の刈谷優里はある日、隣のクラスの青野龍平と廊下でぶつかり言葉を交わす。初めて男の子と喋ってしまったと舞い上がる優里。頭の中は青野くんでいっぱい。特に接点のない2人だったが優里は青野くんに告白し付き合うことに!しかし、二週間後青野くんは交通事故で亡くなってしまう。絶望した優里は手首にカッターを当てて自殺しようとするが、幽霊になった青野くんが現れそれを止める!幽霊の青野くんと再び彼氏彼女となった優里だが、ある日青野くんが豹変し、以降黒青野と呼ばれるナニかが現れるようになるが…!?
グロテスクな絵が描いてあるわけではないのにこれでもかというほどゾッとさせる。絶妙なタイミングなのかその画風なのかとにかく恐怖があおられる紛れもないホラー漫画。読み進めていくとだんだんどういうルールで動いているのかが解明されていくのがおもしろい。優里と青野くんの可愛らしいやりとりはもちろん、その他のキャラクター含め予想外に次ぐ予想外のリアクションやセリフが笑いを誘う。あんなに怖かったのに一気におもしろくなったり切なくなったり、じんわりといい話だったり、考えさせられたりと感情が大忙しになってしまう漫画です。
あずみ
高すぎる画力と繊細な心理描写が魅力の時代漫画
主人公・あずみは、子供時代をたった9人の仲間、そして親代わりでもある師の「爺」しかいない山奥で過ごした。爺…小幡月斎は、あずみと9人の仲間たちを、戦を未然に防ぐ刺客として育てるべく、剣術をはじめ生きる・殺すためのあらゆる手段を教え込んできた。そしてあずみたちは月斎に与えられた最後の試練を突破すると、外の世界に飛び出し、戦の首謀者などを討つ資格として歴史の裏で暗躍し始める。しかし、はじめは「これが自分の使命だ」と信じ切って殺生を行ってきたあずみだったが、外の世界の人々と交流する中で、次第に自分の行いに疑問を持ち、苦悩し始める。これは、菩薩のような心を持った美少女刺客の物語。
この作品は、1巻からとにかく画力が突き抜けています。ヒロイン・あずみが作中において突出した美しさを持っていることが明らかである、と自然に思わせられる描写力が凄まじいです。背景もまた素晴らしく、知らない土地、知らない時代が描かれているのに、そこの生きる人々も生活感がありありと伝わってきます。また、ゴリゴリのアクション漫画・時代漫画ですが、心理描写がかなり繊細な点も見どころです。主人公・あずみは天下に誇る剣技を身に着けた凄腕の刺客…つまり「強い」女性なのですが、内面は必ずしもそうではなく、彼女の苦難する姿がかなりリアルで、その点に関しては言葉少なだからこそ、余計に胸を打たれます。
アルテ
一人前の画家を目指すアルテの物語
16世紀初頭フィレンツェ。ルネサンス時代。絵を描くことにのめり込んでいた貴族の娘アルテは母親曰くまともな生活をおくるには殿方に気に入られ嫁ぐしかないという言葉に反発し、画家工房への弟子入りを決意する。工房をまわるが軒並み断られ唯一絵を見てくれたレオという男のもとへ行くことになるがレオは弟子にするには画板の下準備20枚を一晩で終わらせるという無茶な条件を出す。幾度となく諦めそうになったアルテを突き動かしたのは絵に対する情熱などではなく怒り。女性が一人で生きていくのが困難なこの時代、一人で生きていく力が欲しい、画家になるのはそのための手段だと言うアルテにかつての自分をみたレオはアルテを弟子として迎え入れる。アルテの画家見習いとしての生活が始まる。
この時代を生きた人々の熱が伝わる物語です。地位や権力を持つ者のひと声で全てを潰してしまえるような理不尽で過酷な時代。職人の娘、貴族の娘、高級娼婦、王族、使用人、立場も環境も違うそれぞれがそれぞれの場所で生きている様は熱く、1歩を踏み出すような瞬間は心が震えます。生活が匂いたつような日常を見ているとその尊さが心に染みると同時にあっという間に奪われてしまうかもしれない恐ろしさがより増します。1コマ1コマの絵の美しさやここぞという時のコマ割。多くを語らずともこれでもかというほど目一杯伝わってきてもう、胸がいっぱいです。
Artiste(アルティスト)
特殊な料理人が織りなすハートフルストーリー
パリのレストランで働く気弱な青年・ジルベール。元々はパリ8区の高級レストランのルヴェルシェフのもとで働いていたが、ある事がきっかけでカルマンシェフのレストランで働く事に。雑用係として、毎日皿を洗い続ける平凡な日々を送る彼だったが、陽気な新人マルコとの出会いによって、自分の本当の気持ちに気づき始める。ジルベールの特殊な能力と料理人としての才能にに気付いていたマルコや周りの人々の助けもあり、パリの有名なシェフの一人 ヴィクトール・メグレーに紹介される事に。ジルベールは自信が持てず、メグレーシェフの誘いに中々乗ることが出来なかったが、以前ルヴェルシェフのもとで働いていた事を聞くと必ず私の店に来てもらうと言い渡される。果たしてジルベールの行く末は…?
初めはただの料理漫画かと思っていたのですが、本作に出てくる主人公や登場人物の特殊な能力のお陰で生き辛さやコミュニケーションの困難さが分かり易く描かれていて、今の世の中に合った作品だと思います。主人公の嗅覚と味覚が動物並みに鋭く、同僚が駅にいた女の子がハンカチを落としたので、拾って渡そうとしたら電車が行ってしまったので持ち主がわからず、ずっと渡せずにいたが、ジルベールがハンカチの匂いを嗅ぐとクリームとフランボワーズ、キャラメルソースがすると言ってハンカチを落とした駅の名前を聞くと、その辺りはメルバが有名だからそこの定員さんじゃないかな と警察犬並みの嗅覚を持っているがそれにより過去に気味悪がられる事もしばしば…潜在的な能力よる葛藤や困難がよく伝わり胸を打つ作品だと思います。
アンゴルモア 元寇合戦記
これが鎌倉時代の侍ジャパン!
鎌倉時代、「二月騒動」の罪人として対馬へと流された朽井迅三郎。彼は島へ着くなり突然、島民から「間もなく大陸から蒙古・高麗軍が攻めて来るので共に戦ってほしい」と告げられる。最新鋭の兵器、そして圧倒的大軍を持つ蒙古・高麗軍の攻撃まで残された日は僅か。そんな中、朽井は幕府軍の友人である少弐景資から、対馬の戦いの際には幕府軍も援軍すると約束される。しかし少弐景資は幕府軍との意見の対立により、その約束を果たすことは出来なかった。対馬は見捨てられたのだ。朽井は共に流された罪人たちや対馬の長である宗氏一族、7世紀の白村江の戦いで派遣された防人の末裔たちなど、島の人々と協力し、蒙古・高麗軍と真っ向から戦うことを決意する。
現在でも新説が次々と発表される「元寇」。蒙古・高麗軍だけでなく、鎌倉幕府軍も(控えめに言っても)えげつない戦いを繰り広げてきたそうです。圧倒的不利な状況であるにも関わらず、当時の侍ジャパンはどのように立ち向かったのか、ハラハラする展開が待ち受けています。主人公の朽井は普段は冷静な人物ですが、実はかなりの戦闘狂。その戦いぶりにも注目です。また、「てつはう(鉄砲)」など、最新鋭の武器も登場します。ヒロインの輝日姫など、戦う女性たちも美しく表現されています。そしてこの漫画のタイトル「アンゴルモア」。かつてノストラダムスの大予言にて恐怖の大王とされたアンゴルモアを、この漫画では元寇の蒙古・高麗軍と表現している点が非常にユニークです。
アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり
病院勤務薬剤師・葵の情熱と現実
主人公・葵みどりは総合病院の薬剤師。職場は病院内で、入院患者や通院患者へ薬を提供するのが仕事です。仕事にも慣れ、医師が出した薬の処方への疑義もしっかり出していきます。中には適当な医師もおり、そんな医師に対しては勤務してくるのを待ち伏せすることも。医療チームの一員として、どちらかと言えば目立たない存在でありながらも懸命に働きます。患者さんもまた多種多様。若干癖のある方に対しても熱心に取り組みます。あまりに熱心で時間を割き、先輩薬剤師に注意されることも……。病気や怪我をした時に薬は非常に大切なもの。それを提供する薬剤師の熱い想いを描いた作品です。
大きい病院ならではの苦労が描かれており、読み応えのある作品です。登場人物も魅力たっぷり。個人的には、ドラッグストアで処方箋も扱っている小野塚に興味を覚えました。彼は店の方針の変更で、仕事に忙殺される日々を送っています。薬もどんどん新薬が出てくるので、薬剤師にとって勉強会は重要なもの。しかし彼はそれに参加する余裕もなく、薬剤師として働くことに意義を感じられずにいました。薬の扱いもいい加減になっており、ある患者が葵が働く病院に入院してきたことで物語に登場します。やる気のなさそうな覇気のない目の彼が、少しずつ変わっていくのがいいです。お薬の大切さ、それが安全に提供されることの重要性が伝わってくる魅力ある作品です。
遺書、公開。
死者からの遺書がクラスの闇を暴く新感覚ミステリー
11月、灰嶺中学2年D組のマドンナ・姫山椿が自殺した。可愛く、人当たりの良い姫山椿の突然の死にクラスメイトの誰もが戸惑いを隠せない。新学期、何者かによってクラス全員にメールで届いた「2-D序列」というクラスメイトの順位表によってギスギスしたクラスをひとつにしたのは、序列1位の彼女だったからだ。葬式が終わり、姫山椿のいない教室へと戻ると、机の上に遺書が置かれているのを発見する。何気ない思い出や感謝を綴ったかに見えた遺書には、クラスメイトたちの闇が明かされていた!この遺書の内容に姫山椿の自殺の理由があると考えたクラスメイトたちは、全員の遺書を公開することに。クラスのマドンナを死に追いやったのは誰なのか、疑心暗鬼のホームルームが始まる。
どこにでもあるような中学校の一クラスが、「2-D序列」やクラスメイトの自殺と遺書によって翻弄されていくエンタメミステリーです。遺書とは言いつつ手紙のようなあっさりした文体で書かれていますが、実際の状況と照らし合わせて深く読み込んでいくと毒のような言葉が仕込まれているという緻密な構成にハラハラします。学校という狭い世界の中にありがちな人の闇を描きながらも、その闇に触れた姫山椿がどのように考えたかをクラス全員で考察していく設定が真新しさを感じさせてくれるはずです。ひとつ明らかになってはまた謎が深まる姫山椿という人物と、その死の真相に注目です。
イノサン
動乱のパリに立つ死神・死刑執行人の物語
代々パリの死刑執行人「ムッシュー・ド・パリ」を請け負うサンソン家の長男として産まれた、心優しく美しい少年・シャルル アンリ サンソン。人々からは死神と呼ばれ敬遠されていましたが、当時の死刑執行はパリの貴族・民衆にとってひとつのエンターテイメントでした。それを訝しむシャルルは悩み葛藤しながらも、成長して父の跡を継ぎ、ムッシュー・ド・パリに就任します。時代は変わる、残酷な死刑がこのままで良いのだろうかと悩むシャルル。一方女の身でありながら、卓越した技術を持ち、ヴェルサイユの警備を担うことになったシャルルの妹マリー。死神サンソン家が、フランス革命目前の激動のパリで貴族や罪人たちと絡み合う物語。
全ページが絵画と見紛うほど緻密に繊細に描かれています。圧倒的な画力は「本当に漫画か?」と言いたくなるほどです。残酷な描写や性的なシーンが比喩で描かれていたり、現代風に風刺されていたりと、読者が考える点も多く読んでいて引き込まれます。見開きのページは特に、電子書籍で読む場合は必ず見開きで見られるように設定してほしいです。重要なシーンでは効果音を使わず、絵の力だけで表現したりしていますが、まるで音が聞こえるようです。授業では習わなかったフランス革命の裏側が丁寧に描かれているのも見どころです。当時の情勢や常識が面白くてよく分かる漫画です。
いぬやしき
余命三か月の中年が機械化?しがないサラリーマンが再生して見出した生きがいとは?
犬屋敷壱郎は50代なのに老人に見える老け顔のサラリーマン。家族に家を買っても文句を言われ、自分の内なる思いとは裏腹に、現実では報われることがない日々に無力感を感じていた。その上、がんが発覚し絶望する。そんなある日、犬の散歩中に、犬屋敷は宇宙人が引き起こしたUFOの落下事故に巻き込まれて命を落とす。しかも宇宙人により、兵器を搭載した機械体になって再生してしまう。自分の体に戸惑いつつも、自分の力で人助けができることに気づいた犬屋敷は、人を助けることで自分の生きがいを見出していく。一方で同じUFOの事故に巻き込まれた高校生、獅子神 皓は、その機械体の能力を悪事に使用していた。獅子神の悪事を知った犬屋敷は、獅子神の友人且つ自分の娘麻理の同級生・安堂と手を組み、獅子神の悪事を制止しようとするが…!?
会社や家族にもいまいち威厳を示せず、努力や思いが報われないサラリーマン。心優しくそれなりの正義感も持ち合わせた人物なのに、それが報われないばかりか、末期がんを宣告されるという厳しい現実からの意表を突いた展開に驚かされます。機械になっても心を失わず、今まで無力で思ってもできなかった善行を行えるようになった犬屋敷が、自分の命を、自分の存在を人のために役立てることに生きがいを見出します。機械になって初めて生きている実感を得たことは、皮肉ではあるものの彼の人柄に感動すら覚えます。敵対する高校生・獅子神も、ただのヒールではない点が魅力的ですらあります。悪役ながら彼なりの哲学に基づく行動に今の社会へのアンチテーゼが内包されていて、考えさせられる作品です。バトルのスピード感と緻密な作画にも注目です。
今際の国のアリス
狂った世界で繰り広げられる心理戦!戦慄のサスペンス・サバイバルゲーム!
将来に対する漠然とした不安を抱えながらも打ち込めるものもなく、落ちこぼれの有栖(アリス)は今日も退屈な日々を過ごしていた。いつものように友達と共にブラブラと夜を徘徊していたアリスだったが、急に大きな花火が夜空に打ちあがり、アリス達は光に包まれてしまう。古びた店内で目が覚めたアリス達は外へ出ると……そこには人気のない寂れた街が広がっていた。最初は楽観的なアリス達も次第にこの世界が現実であることを考え始める。そんな時、アリス達の前に異常な光景が現れ、生き残りの「げぇむ」へと強制的に参加することとなる。果たしてアリス達は狂った世界で生き残ることが出来るのか?!人の狂気と心理が入り乱れる戦慄のサスペンス・サバイバルゲーム!
残酷な世界でデスゲームが繰り広げられるのですが、人の狂気をダイレクトに感じることができゾクゾクします!ゲームの内容は人の心理や狂気に関係したものから肉体を使った戦闘ものまで様々ですが、どのゲームにも見えない仕掛けがあり、ゲームの決着では常識を覆すような結末が待っています。また、一見平凡に見えるアリスですが、人の命がかかった環境下において、人の見えない・人の気付けないようなものを見ることができ、ゲームのカラクリを暴く様子はシビれます!ギャンブルなどの駆け引きは勿論ですが、デスゲームならではの人の狂気に触れたい方は特におすすめです!
ヴィンランド・サガ
争いあうことのない楽園を求めて、ヴァイキングの新大陸への旅が今、始まる。
始まりの舞台は西暦1,000年ごろのアイスランド。フィンランド・ノルウェーなどに囲まれた北海では、あらゆる地に現れ、戦・略奪など暴虐を繰り返すヴァイキングが全盛を極めていた。主人公の少年「トルフィン」は、痩せてはいるが戦の少ないアイスランドの土地に生まれ、いつか戦に赴くことを夢見ながら平和に暮らしていた。そのヴァイキングの中でも最強と謳われた父を巡り、彼は幼くして戦の禍根に巻き込まれていく。平和を望んだ父の言葉を胸に、「豊かに」「生きる」ことの答えを求めて、やがて幻とされる“新大陸”を目指す大冒険譚が始まる。
とにかく面白いの一言!出てくるキャラクターの個性も強く、敵役なのに一つ一つのセリフがぐっと深かったり、ヴァイキング達の独特の死生観や宗教観がこの漫画ならではです。誰もが知っている「ヴァイキング」という存在ですが、その歴史的背景や生活スタイルを詳しく知る人は少ないはず。そこにスポットを当てて描かれている作品は少なく、中でもこの作品ほど読みやすいものは他にないと思います。絵もきれいで戦闘シーンの書き方が上手いので、ちょっと小難しい政治の話も出てきますが、それらを読み飛ばしても楽しめること間違いなしです。
嘘喰い
読者も騙される命懸けのどんでん返し!
ギャンブル狂で多額の借金を背負う青年梶隆臣は、ある日パチンコ店で当たりに気づかず席を立とうとする男・斑目貘にアドバイスする。そのおかげで大勝ちした貘は、お礼に梶の借金をチャラにする手助けをする。彼の正体はかつて「嘘喰い」の異名で名を馳せた伝説のギャンブラーであった。それ以来貘に惹かれた梶は行動を共にするようになり、金と暴力・騙し合いの世界に身を投じていくこととなる。どんな賭博でも取り仕切る秘密組織「賭郎」とは何なのか。その頂点に君臨するお屋形様の正体とは。そして、貘はなぜ自らの命を賭けてまで『屋形越え』を目指すのか。あらゆる嘘が複雑に絡み合う騙し合いの物語。
ギャンブル漫画らしくあらゆる心理戦が繰り広げられるのですが、一見勝負に負けたかのように見えての逆転劇が爽快です。裏の裏の裏まで読み合う高度な駆け引きの描写が秀逸で、実は最初から伏線が張られていたりなど、何度も読み返すことになりました。時には読み返しても分からない時も……。また、命を賭ける勝負内容がババ抜きだったりハンカチ落としだったりと、慣れ親しんだ身近な遊びが題材になることが多いです。ギャンブル漫画でありながら、暴力も重要な要素のひとつです。主人公の貘は虚弱体質なので基本的にやられっぱなしですが、賭郎同士の戦いや敵対組織とのバトルシーンも必見!全49巻とかなりのボリュームながら、一気読みしてしまうこと間違いなしです。
宇宙兄弟
宇宙への憧れが詰まった名作!
舞台は2025年の日本、主人公はもじゃもじゃ頭の兄のムッタとツンツン頭の弟のヒビト。二人は子供の頃、ある体験に魅せられ、共に「宇宙飛行士になる」という夢を抱く。しかし、能力はあるにも関わらずどこか卑屈な性格の兄は成長するにつれて夢を諦めるようになりサラリーマンの道へ。弟は夢に向かって真っすぐに突き進み兄より先へ宇宙飛行士の夢を叶える。兄としての劣等感を感じながら日々を過ごすムッタであったが、ある日上司とトラブルを起こし失業。そんな失意のドン底にいた兄を救ったのは弟のヒビトであった。兄に内緒で宇宙飛行士選抜試験に書類を提出していたのである。そして、書類選考を通過したことをきっかけに、再び「宇宙飛行士になる」という夢を目指すのであった。
中年サラリーマンのムッタが失業という挫折を味わったあとに、一度は諦めた宇宙飛行士という夢を再び追いかけるというヒューマンストーリー。宇宙飛行士になるために数々の障害があったが、それを一つ一つ乗り越えていく様は世の中年男性に大きな希望を与えるだろう。宇宙モノは世界観をしっかりと作りこまなければ途端に陳腐な物になってしまうが、宇宙兄弟はその心配は杞憂であった。世界観をきっちりとつくり込みそのリアリティさが面白さを引き立たせている。特に、宇宙飛行士選抜試験のシーンではドキドキとワクワクが止まらず、一気に読み進めてしまった。大人が熱中できる本は何かと聞かれたら真っ先に宇宙兄弟と言える名作です。
ウロボロス―警察ヲ裁クハ我ニアリ―
復讐を誓った二人の男が警察組織の巨大な闇に迫る問題作
児童養護施設で共に育った龍崎イクオと段野竜哉は、育ての親とも言うべき結子先生こと、柏葉結子が殺される現場を目の当たりにしてしまう。犯人を目撃しながらも、謎の圭津関係者金時計の男に脅され、事件を揉み消されてしまう。なぜ結子先生は殺されなければならなかったのか? 事件の真相を明らかにし、警察組織へ復讐することを誓った二人は15年後、警察官と暴力団組員という、全く別の道を歩むのだった。対照的な世界に身を置きながら、目的を同じくする龍崎イクオと段野竜哉は、互いの地位を利用して協力し合いながら、15年前の真実を追い求めるのだったが、そんな2にんの前に立ちはだかったのは、警察組織が抱える想像を絶する巨大な闇だった。
物語を通して、大きな謎として龍崎イクオと段野竜哉の前に立ちはだかるのは、15年前に2人に口止めを行った金時計の男の正体です。警察関係者であり、現在は警察の上層部にいる人間だということは次第に明らかとなってゆきますが、具体的に誰であるかが、事件の真実を明らかにする鍵となりますね。そして、その過程で警察という組織が抱えている、負の側面が事細かに描かれている点も、読んでいて圧巻でした。そんな強大すぎる敵に対して、龍崎イクオと段野竜哉が、刑事とヤクザという、全く異なる立ち位置に身を置きつつも、固い友情で結ばれ、互いに連携しながら闘ってゆく様には最高に惹かれました。正直、ハッピーエンドとは言えない作品ですが、共に育ち、共通の目的を持った2人の絆こそが、この作品の一番の見どころと言えます。
映像研には手を出すな!
空想系女子高生の最強世界
舞台は芝浜高校。アニメ制作をする映像研を立ち上げ、活動する三人組の女の子の話。主人公の浅草みどりは空想力が非常に豊かで、「最強の世界」を作るため精力的に活動していく。読者モデルでお嬢様、人物の動きにこだわった描写が得意な水崎ツバメ、お金が好きで詭弁がたくみな金森さやかに助けられながら、次々に人々を揺さぶる作品を作り上げていく!現実が浅草の空想で塗り替えられていくシーンが圧巻!アニメ化・ドラマ化・映画化もしていますが、原作ではまた違う味わいを楽しめる!
漫画内の絵のテイストはラフっぽいのですが、よく見ると書き込みが緻密でじっくり読みがいがある漫画です。アニメ版の浅草みどりはちょっとビビりなのですが、漫画版の浅草みどりはビビりな中にもどっしりとした山のような安定感があり、独自の世界観を作る人物としての説得力があります。かわいい女の子がちょっと古めかしいセリフ回しをするシチュエーションが好きな人はハマると思います。映像研の仲間、水崎ツバメ、金森さやかとの関係も、女子だけで構成されている関係ながらもべたべたしすぎず親しみやすいです。おすすめは4巻のタヌキの話です。ややミステリチックで謎解きの楽しみがあります。
応天の門
イケメンプレイボーイと学問オタクの最強タッグ
平安時代。藤原氏が牽制を誇る都では互いの腹を探り合うような貴族社会です。ある時、藤原親嗣の屋敷に仕える下女が行方不明になったとの報告がありました。当時は怪奇が信じられていた時代。人々は「鬼にさらわれたのだ」と噂します。幼帝もまた、そのうわさに怯え調査させることに。命を受けた在原業平は、検非違使が捕らえた青年・紀長谷雄との騒動に巻き込まれます。長谷雄がだいそれたことをする人物で無いことを知っている業平。騒動の中、もうひとりの青年と出会います。彼の名は菅原道真。道真との出会いにより、事件の謎は解かれ、業平と道真との親交がはじまります。
後に政争に破れ、学問の神として祀られることになる菅原道真の青年期が描かれています。先の騒動時、心ならずも在原業平に助言をすることになった彼は当時はまだ学生でした。しかし道真は学問には極めて秀でています。当時は怪異が普通に信じられており、人々はなにかにつけては「鬼の仕業」など非科学的なことをいう時代でした。そんな中「鬼などいるはずもない」というのが道真の主張。理論的に考える道真が魅力的です。一方でかなりのインドア派。学問オタクといっていいほど書物を漁るのが彼の日々です。道真のそんな生活は業平とであったことで大きく変わります。業平が持ち込んでくる「やっかいごと」を面倒そうに、しかし的確に解決するのは痛快。平安京を舞台にした、ミステリーを楽しめる作品です。
お~い!竜馬
日本史への足掛かりにふさわしい作品
この作品は、幕末の英雄・坂本竜馬の生涯を描いた青年漫画です。物語は竜馬誕生のシーンからはじまり、京都の近江屋にて切り殺される話で幕を閉じる。竜馬は身分差別が激しかった土佐に生まれ、幼少期、剣術も学問も駄目、周囲からは「アホの竜馬」などと言われ見下されてきた。しかし、母の死や友人が「上士」という身分の高い者に切り殺されるといった経験を経てからは徐々に変わり始め、剣士としても頭角を現し、北辰一刀流の免許皆伝を得るまでに至る。そして身分差別が激しく、理不尽がまかり通る世の中を変えるべく、幕末の動乱を駆け抜けていく。
この作品は、日本の歴史に興味がない人にこそ読んでもらいたい作品です。私自身、この作品を読むまでは歴史に全く興味がありませんでしたが、この作品を読んでからは幕末という時代や、幕末を題材にした他の作品にも興味を持つようになりました。しかし、ただの歴史モノと侮るなかれ!「漫画として」単純に、純粋に面白い作品でもあるのです。変わり者の少年が、壮絶な経験をきっかけに変わり始め、やがて大きなことを成し遂げるという流れは少年漫画としてはかなり王道的ですし、難しいことを考えずに楽しむこともできます。特に、竜馬以外の主人公ともいえる存在、武市半平太・岡田以蔵両名の壮絶な物語が描かれる9巻は必見です。
岳
山に語りかけると見える人生感
山岳救助隊ボランティア「島崎三歩」彼は自他共に認める謂わゆる「山馬鹿」であり山のプロフェッショナルです。山は美しく広大で人を魅了します。しかし、立ち向かう者に何時でも笑顔とは行きません。高山にはコンビニも、病院もトイレすらない事もしばしばあります。主人公は世界の最高峰や難度の高い直登(断崖や剃り変えった壁を登る事)も経験し幾多の喜びも涙も心に入れたまま今日もボランティア活動をしています。その喜びも涙も全部消化せず心に刻み込んだままに「重くない重く無い」と。山に住む主人公です。365日24時間休み無し。それでも彼は言います「よく頑張った!」「また山においでよ!」
オムニバス形式で繰り広げられる「山」に関するストーリー展開です。しかし「山」とは「富士山」のような山だけでは無いのです。例えば仕事をしていれば成長の段階で超えなくてはいけない山であったり、定年退職を間近に迎え頂点まで登った下山する時の山。自分の限界を知る為に登る平坦な山や、急勾配の山。人生には数え切れない程の山があります。山の数だけ人生があります。時に優しく、時に厳しく。その登山者達を見守り応援する者たち。見所も人の数だけあります。やってみなければ分からない事も。最初から諦めてしまう事も。全て「山」で形容する事が出来るような気がします。全てが全て共感出来ないかもしれません。ページを捲る度に考えさせられる世界観。貴方が感じる山とは何でしょうか?
かぐや様は告らせたい
「相手に告白させるか」という頭脳戦を繰り出すラブコメ!
舞台はエリートたちが通う名門校。生徒会副会長の四宮かぐやは、巨大財閥の令嬢で、成績優秀かつ武道もできて、容姿端麗の女の子。生徒会会長の白銀御行は、学園内では珍しい一般階層の出ではあるが、こちらも成績優秀。二人は周りからも憧れられるような存在で、お似合いと噂されている。そんな二人は、両思いであるのにお互いに素直になれず、とにかく「いかに相手に告白させるか」と考え日々頭脳戦を繰り広げている。しかし、天才脳が故にから回ったやりとりばかり繰り返しては、毎話勝敗が決まるものの中々くっつかないというヤキモキするラブコメ漫画!
生徒会を舞台に、会長と副会長が頭脳戦の恋愛を繰り広げます。二人とも頭が良いのに、恋愛に関しては、その頭の良いっぷりが空回りして無意味なギャグみたいになっているところが面白いです。また、白銀やかぐや以外のキャラも個性的で、特に書記の藤原や、会計の石上のキャラが本当にクセが強く、少し調子に乗る癖がありますが、憎めない性格で見ていて非常に楽しいです。特に好きな話は、勉強はできるけど歌や運動センスが壊滅的な会長を、藤原がクタクタになりながら教えるシリーズ。本番でできるようになった会長を見る藤原は、まるで母のようで、普段はボケの立場なのにツッコミまくっているのも貴重で面白いです。
カラダ探し
ミステリー要素もある学園ホラー漫画
とある高校では「赤い人の呪い」が語り継がれていた。50年前に殺害された少女が「赤い人」という霊になり生徒を八つ裂きにするという恐ろしい怪談だ。ある日、主人公の森崎明日香、伊勢高広らの6人は、三神遥という同級生に「私のカラダを探して」と奇妙なことを言われる。その夜、気づけば6人は学校に飛ばされていた。赤い人の噂など半信半疑だった6人だが校舎内で赤い人を見て惨殺されてしまう6人。しかし次の日の朝になるとまたいつも通りの朝を迎える。そしてまた夜になれば校舎に飛ばされ、カラダ探しが始まる。赤い人の呪いから抜け出すためにカラダ探しと立ち向かう主人公たちに目が離せない!
赤い人が怖くてホラー漫画好きの人には是非オススメの漫画です。赤い人に殺されるシーンなども普通に腕や足や頭がちぎれて血が飛び散る描写なども多いのでグロいシーンが見たい人にもオススメです。ストーリーとしても呪いから抜け出すために起こる仲間割れや裏切りなど、登場人物たちの感情などがリアルに描かれていて見入ってしまいます。カラダ探しをしながら次々と謎が明らかになっていくストーリーがとても面白いです。カラダ探しで殺されても何度も生き返るというゲーム性のある設定も新しいホラー作品といった感じで新鮮な感情で楽しめるホラー漫画です。
GANTZ
何のために戦うのか?非日常に居場所を見出した高校生の変貌と不条理
無気力な高校生活を送っていた玄野計は、下校途中の地下鉄のホームで、小学校時代の同級生・加藤勝を見かける。すると酔った客が線路に落下、加藤はその客を助けようと線路に降りる。加藤の訴えで救出に手を貸してしまった玄野は、走ってきた電車に轢かれたと思ったとたん、いつのまにか大きな黒い球がある部屋に転送されていた。GANTZと呼ばれるその球体は、死んだと思った人間に「星人」と呼ばれる何者かと戦わせ、成果次第で点数をくれるリアル戦闘ゲームのような行為を指示していたのだ。玄野はその異空間で徐々に星人との戦闘に魅了され、自分の中に眠っていた闘争本能を覚醒させていく。GANTZの目的は何か?玄野とGANTZで出会った人々の運命は?様々GANTZに運命を翻弄された人々が繰り広げるSF巨編。
想像の斜め上の展開に定評がある奥浩哉先生の代表的ヒット作です。宇宙人なのかどういう生き物なのかもよくわからないものと、強制的に戦いを強いられ、戦いのルールもよくわからないまま物語は進行します。謎を主人公たちと同じ目線で解決していける楽しさもあります。戦闘や日常で生まれる友情や愛情から、無気力だった玄野がなぜ無気力になってしまったのか、また徐々に責任感や正義感を培っていく姿は魅力的です。玄野の親友・加藤の、融通が利かないほどの真面目さも良いアクセントとなっています。ヒロインやヒーローはこうあるべき、という常識を覆した、どこでどのキャラクターがドロップアウトするかわからぬ展開が見どころです。謎の正体にたどり着くまでが長い物語ですが、スピード感があり読者を飽きさせません。
寄生獣
人類は排除されるのか…?寄生生物との戦いの末にそれぞれがたどり着いた答えとは…
全世界で同時に発生した犯人不明のミンチ殺人。そんな中、平凡な高校生の泉新一は突如謎の生物が右手から侵入したところをかろうじて防ぎ、そのまま眠りについた。しかしその生物が新一の右手を捕食し寄生したことで、新一と寄生生物『ミギー』との相容れないはずの2人の共同生活が始まる。脳に寄生されていない稀有な個体である新一は危険とみなされ、頭部の形状が自由自在に変わる脳に寄生された人間『パラサイト』に命を狙われていく。高いIQを誇り、新一に興味を抱くパラサイト田宮良子。人類こそが地球に巣食うパラサイトであると考えるパラサイトのリーダー広川。そして田宮良子によって生み出された最強の生物後藤。圧倒的な殺戮の前に人類は喰い殺されていくだけなのか。そして新一とミギーの運命は。
パラサイト達による戦闘シーンでは寄生部分を刃物状に変化させ超高速で斬り合うシーンがあり、その独創性もあって最初に読んだ時は衝撃を受けます。後藤の圧倒的な力による殺戮、田宮良子の頭脳戦も見応えがあります。また、寄生獣は戦闘シーンだけでなく、人間とは何か、生きるとは何かなどを説いた作品となっています。人は生きるために殺して食べるが、逆に殺されるのは許せない矛盾。何故生まれてきたのか?生きるとは何か?人間側とパラサイト側の両方から描かれる、各々の葛藤に考えさせられます。そして、最後の結末では自分が何か壮大なものに包み込まれているかのような神妙な気持ちになります!
ギフト±
命の再配分〜あなたへ命の贈り物〜
クジラには無駄なところがない。肉はもちろん、油、ヒゲ、骨全て利用することができるのである。物語の主人公 鈴原 環はどことなく人間らしさの欠如した人形のような雰囲気を持つ女子高生。そんな彼女には秘密があった。彼女は更生の見込みがなく法で裁かれることのない犯罪者を「クジラ」と呼び捕獲、生きたまま解体する。そしてそれらの臓器は移植手術を待っている人々の元へ届けられる。まさに命の再配分をおこなっていたのだった!何事にも動じることなく人間を解体をするときでさえも淡々と作業して行く彼女にはただ1人心を動かされる人物がいた。その人物の名前は英琢磨。環と琢磨を取り巻く環境、そして人間関係の複雑さに注目です。
主人公である鈴原環の、ある意味での純粋さに注目。彼女を取り巻く人間達の関係性や彼女が何のために生まれなぜ人間を解体するようになったのか、登場人物達の目的は何なのか物語が進むにつれ明らかになって行く過程は目が離せません。臓器移植の難しさと先進医療。そこに潜む闇について考えさせられます。生きたまま人間が解体されてゆく描写はもし自分だったらと考えただけでも恐ろしく絶対に悪いことはしないようにしようと思わされます。法で裁かれるより環に捌かれることの方が何倍も怖いですからね。この漫画を読んだ後にはキビダンゴという言葉にドキッとしてしまいそうです。臓器売買というダークなテーマでありながら登場人物それぞれの主張、正義のぶつかり合いが見どころです。
キングダム
中華統一までの苦難と成長を描く戦争漫画
秦という国の下僕として生活していた主人公の信ともうひとりの漂は、将軍になるため日々剣で修行をしていた。ある日、王族の家臣の一人が信たちの前に現れ、漂が王都に連れられて行くことに。数日後の夜、信の家の前にドタッという物音があり、見てみるとそこには血だらけの漂が倒れていた。信は、漂が何者かに殺られたことを知る。多くの理解不能な状況に信は前に進む。石碑村という街につくと、そこには、漂と全く顔の同じな人物が現れ……。信は、この先に待ち受ける苦難を何度も打ち返し、戦いと共に、自身の成長と、仲間を増やしていくことに。100人将、300人将、1000人将と仲間を増やしていき、多くの事を学びながら王と共に中華統一という目標に突き進む!果たして秦の王と信は中華統一を成し遂げることができるのか?!
主人公の信が、漂という幼馴染を想いながら、二人の目標であった天下の大将軍を目指すというストーリーが見所です。また、王と信の友情と成長が所々に表されるのも見所です。実際に実写化されている漫画でもあり、知名度が高い作品ではあります。単なる戦争漫画とは違い、実際に中国史を元に作られている為、現実に起きていた歴史も学ぶことができます。多くの仲間や、尊敬する将軍が殺される場面も多いです。漫画でここまで手汗握るストーリーと、感動が同時に来る作品は、他にないと思います。また、中国の始皇帝を柔らかく表現している事も、のめり込みやすく誰でもが読める作品になっています。
金田一少年の事件簿
名探偵の孫が受け継ぐ探偵物語
不動高校2年生の金田一一はいつもは学内一のボンクラとしてぐうたらな生活を送るただの一般人であった。しかし、彼には秘密がある。祖父が数々の難事件を解決してきた有名な探偵金田一耕助なのである。そんな探偵の孫の一の元に、次々と舞い込む難事件。オペラ座館で殺されていく演劇部の部員達。学校の七不思議通りに殺されていく生徒達。旧家を巡る骨肉の争いと、怨霊首狩り武者の伝説。謎の窃盗犯怪盗紳士からの予告状。吹雪の雪山で伝承の鬼、雪夜叉に次々殺されていくTVクルー達。これら難事件を祖父から受け継いだ探偵の才能とIQ180の知能を駆使し、金田一一が鮮やかに解決していくミステリー漫画!
この漫画の魅力はまず第一に犯人です。犯人達は正体がバレるまでは雪夜叉、放課後の魔術師といった怪人名というもので呼ばれいます。時には伝説の化物の姿で描かれる犯人達の姿は、この作品の恐ろしさに一役買ってくれています。そんな恐ろしい犯人達ですが正体が分かり、動機語りの段階に入ると評価が一変します。例外も存在しますが多くの犯人達が、殺人をしてもしょうがないと読者に思わせ感情移入をするだけの壮絶な動機を持っているのです。第二の魅力はバラエティー溢れるトリックです。この漫画では犯人が殺人をする際に密室殺人やアリバイトリックなど様々なトリックが出てきます。そんなトリックが金田一によって謎を明かされた時は、そうだったのかと驚けますし、解答編に入る前に自分で予想して答えが合ってるか答え合わせするのも楽しいです
薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~
知識と好奇心で後宮の謎を解く痛快薬師ミステリ
誘拐され、身代金代わりに後宮へと売られた薬師の猫猫(マオマオ)。年季が明けるであろう二年後を目指して下女の仕事を真面目にこなしていたが、ある日皇帝の子の不審死が相次いでいるという話を耳にする。呪いではないかと噂する下女の話に好奇心と正義感が疼いた猫猫は、薬師としての豊富な知識を使ってこの件を調べ始めることに。しかし、そんな彼女の行動に目を付けた美麗の宦官・壬氏(ジンシ)の思惑に巻き込まれ、寵姫の侍女へと出世してしまう。そこで毒殺未遂、原因不明の食中毒など後宮で起こる様々な事件にぶつかり、猫猫の人生は一変する。若くても女でも関係ない。知識と好奇心で後宮を救う薬師ミステリ。
猫猫が持ち前の知識で繰り出す推理はどれも納得感があり、薬草や毒の知識が一切なくてもひとつずつきちんと理解しながら読み進められます。毒に恍惚としてしまう変わった主人公ですが、庶民的な感覚を持っているところが可愛く親近感が湧くキャラクターです。シリアスさのあるミステリパート以外はコミカルなシーンが多いため緩急がついていて、それが飽きが来ない要因だと言えます。サイドストーリーとして猫猫と壬氏の緩い恋模様も描かれていますが、メインであるミステリパートを邪魔しない絶妙なバランスを保っているので、スパイス的な役割として物語をより面白くしています。
グラップラー刃牙
男なら誰もが一度はあこがれる最強の称号へ!
主人公の範馬刃牙は表向きは日本に生まれ育った体格のいいごく普通の17歳の高校生、しかしその正体は、徳川家の末裔である徳川光成が主催する東京ドームの地下競技場で開催される大会のチャンピオンであった。人類最強と呼ばれ、「オーガ」の異名を持つ父、範馬勇次郎を倒し世界最強という肩書を得るため鍛錬と強者との戦いに日々明け暮れる。その中で出会う強敵との激闘を通じ、戦いのスキルや人間的に成長し、戦った相手との友情をはぐくみ、ともに最強の頂を目指していく。若干17歳の高校生の少年が世界最強を目指す物語の原点が今始まる。
見どころとしては、範馬刃牙の成長と戦いの中ではぐくむ友情、親子の愛、そして作中全員が信念をもって世界最強という肩書を目指しているというところです。範馬刃牙という人間は戦いの中で相手の技を見極め吸収していくなどの戦うセンスを磨いていくだけでなく、出会ってきた仲間たちと友情をはぐくみともに高みを目指していくその過程が青春だなと思います。また、幼少期の話では、母親との関係の話も出てきますし、最強を目指すきっかけについて理解できますし、作中全員が最強という称号を目指しているのが読者に本気とは何かというところを訴えかけてくれるのではないかと思いました。
クロコーチ
謎が謎を呼ぶ!洗練されたダークミステリー!
警部補・黒河内圭太は真っ当な刑事ではない。政治家や大手企業、記者や上司の弱みまでも握り、金をせびって彼らの醜聞をもみ消す悪徳刑事。手を汚すことを厭わず、また金にも抜け目がない。”うっかり”消してしまった人の数も何人いることやら。「県警最悪の警察官」と上官にも蔑まれる彼の元に、清廉潔白、キャリア組、正に正反対の若手・清家真吾管理官が配属されることとなる。真面目な清家は始めはお堅く、黒河内を嫌悪するが、次第に修羅場に付き合わされ、視野を広げて刑事として成長を遂げていく。証拠を出さない、法で裁けない大悪党を追い詰め、彼らが選択するものは?!そして黒河内圭太とは何者だったのか?結末に驚きの答えが見つかる。
物語には2人の主人公がいて、その性質・あり方は正反対そのものです。清家は本来キャリア組のエリート上司なのに、部下の黒河内にひたすら面倒事に連れまわされます。しかし、黒河内も狡猾ですがどっしりとした大人の男性で清家に多くを学ばせます。その様子を「部下上司」と後々からかわれる程です。その彼の成長っぷりが中々面白く、しかもリアルで無理が無いので臨場感があります。そして何と言ってもくせ者・黒河内ことクロコーチ。悪党警官というより悪党が警官の肩書を持っていると言い換えたほうが良いのでしょう。殺し・騙し・詐欺・脅しまでなんでもござれで、3枚目を気取りながらどこにも隙が無い超の付く切れ者です。そんな彼の本当の目的は何だったのか。一体誰の為だったのか。最後までみてようやく分かるというストーリーテラー作品です。
絢爛たるグランドセーヌ
絢爛な舞台を目指す少女たちの熱い戦い
主人公・有谷奏はまだ小学生。しかし、近所に住む少女の影響でバレエに魅せられ、その世界に進みます。始めはまだトウシューズも許されなかった奏。トウ、つまりつま先で立つことは非常に肉体を鍛える必要があり、初心者には無理なのです。初めての発表会では奏はバレエシューズで参加します。そこで舞台に立って踊ることに魅了されるのでした。発表会での実力を評価され、ようやくトウシューズを許された奏。彼女はそこから世界の舞台へ立つことを夢みはじめます。そのために必要なのは、海外のバレエ学校への留学。多大な費用がかかる留学には奨学金が重要となってきます。奏は持ち前の明るさと前向きな精神で、奨学金を得るためにコンクールに参加します。
バレエ漫画というと、これまでは少女漫画が多かったです。それが青年誌で描かれているのが、実は重要ポイント。少女漫画の場合、どうしても読者層に合わせて恋愛要素がでてきます。しかし、本作では全く出てきません。あくまで、スポ根目線で描かれているのが面白いです。登場人物では栗栖さくらという少女もユニーク。奏と同世代ですが、圧倒的な実力をもち、どこか高慢さも持っている彼女。しかし、彼女は彼女なりに努力もしており、精神的に脆い部分もあります。彼女いわく「コミュ力おばけ」な奏と、さくらとのやりとりも面白いところ。ちょっとズレた感じの会話がそれぞれの個性を表しています。ストーリーのテンポもよく、楽しんで読める作品です。
ケーキの切れない非行少年たち
非行少年たちが抱える、本質的な問題に迫る作品
精神科医・六麦は、少年院での診察も行っています。彼が担当しているのは「支援教育課程Ⅰ」に分類されるところ。そこは知的障害、あるいはそれに準ずる少年たちが収容されています。六麦は、彼らにあるテストをします。それは丸をケーキに見立て、三等分にさせること。通常ならY字形式に切り分けるところ、多くの少年たちはそれができません。歪な形に切り分けてしまうのです。そんな少年たちを見つめていた六麦はあるニュースを知ります。田町という20歳の青年が女性を撲殺したというものでした。そのニュースを聞いた六麦は衝撃を受けます。なぜなら、田町はかつて少年院に収容されており、彼もまたケーキを切れない少年だったのです。
「ケーキが切れない」ということの意味すらよくわからず、本書を読んで驚きました。なぜ「三等分」ができないのか。そこには少しの悲しみも覚えます。田町少年は、IQ68の軽度知的障害。しかし、知的に問題があっても、当たり前の家庭で当たり前に暮らしていれば「三等分」の機会はあるはず。それがなかったということに悲しみを感じます。六麦と少年たちとの会話なども丁寧に描かれており、彼らが抱える本質的な部分をみることができます。1巻の大部分は田町少年の物語。彼に対し、六麦は「5年後どうなっていると思うか」と問いかけます。その答えと、結果。ここが大変みどころです。
コウノドリ
生まれることはすべてが奇跡
医師であり、ジャズピアニストでもある鴻鳥サクラが主人公の産科医療マンガです。サクラが勤める病院「聖ペルソナ総合医療センター」で起こる妊婦とその家族の話を中心に、個性的な医師・看護師などの医療従事者のストーリーも相まって物語が展開していきます。綾野剛主演でテレビドラマ化もされ、とても話題になりました。切迫流産や人工妊娠中絶、中学生の妊娠や特別養子縁組など様々なテーマが語られます。風疹の予防接種の重要性や不妊についてなど、いつか子どもを持つかもしれない世代が知っていたい内容も多く、たくさんの人に是非読んでもらいたいマンガです。
複雑な過去を持つサクラはどうして、産科医とジャズピアニストという二つの顔を持っているのか、困難な出産の現場に向き合うサクラたち医療従事者の葛藤や絆、そして命の大切さ。感動の連続です。特にテレビドラマでも話題になった中学生の妊娠は、中絶の直前でやっぱり生みます!といって美談で終わるようなマンガが多い中、とてもリアルに現実を描いたのではないかと思います。とにかく登場する人物がリアルでありながら個性的で、自分の周りにもいるような人たちにドラマがある、それが命の現場なんだなと思えるそんな漫画だと思います。
孤高の人
青年は何処へ向かうのか?リアルな人間関係が描かれる山岳漫画!
孤独で人と関わろうとしない主人公の森文太郎。内向的な性格が原因でクラスメイトに疎まれ、転校した日に校舎の壁を登ることに。死んでもおかしくない状況の中で登り切り、ロッククライミングに興味を持ち始める。そして、より高い場所を求めて、厳しい山へ足を踏み入れることになります。物語の後半では、孤独だった主人公も結婚し、狂気じみた山への思いは小さくなっていきます。そんなときに、後輩が現れ、「やっぱりK2にのぼらないか」と誘われます。果たして主人公の決断は?
この作品を読んで、人間関係が人生に大きな影響を与えるということを、改めて感じました。誰でも一回は、一人になりたいと思ったことがあるでしょう。主人公にその時の自分が重なって、作品に没頭してしまいます。主人公の森は天性の才能を発揮して、頭角を現していきます。「単独行」の森と呼ばれるようになります。そして、そんな森にいろんな人たちが関わっていきます。一人の場所を求めて、社会の中でもがく森に苦しくなるほど共感してしまいます。
ここは今から倫理です。
生きるのに不必要であり必要である学問
主人公の高柳はクールでミステリアスな雰囲気を持ち、高校では倫理を教える若い男性教師。彼は学校で様々な生徒の問題につきあたる。不特定多数の生徒と不純異性交遊に走り自分の存在価値を見失う生徒、自傷行為をやめられない生徒、学校ではいっさい言葉を発さない生徒…。10代後半という繊細で不安定な時期を生きる生徒たちがそれぞれ抱える悩みに、古来の学者たちの言葉を交えながら、高柳は丁寧に向き合っていく。生きるのには決して知識として必要な教科ではないながらも、覚えておけばきっと心が救われる。そんな複雑な学問である「倫理」を軸とした新感覚の学園群像劇。
この作品でも書かれている通り、倫理は選択性の科目であり、高校では学ばなかったという人も多いはずです。私のように倫理を勉強したことがある人は懐かしい気持ちで楽しめると思いますが、倫理を勉強したことがなくとも、新しい価値観や考え方に触れられることができる作品です。不必要が必要であるという矛盾についても、考えさせられると思います。高柳先生が熱血教師という訳ではなく、人との距離感を大事にしている先生であるため、現代の教師像の在り方としてすごく素敵だなと思いました。高柳先生に教えを受けてから生徒たちが少しずつ変わっていく過程はやはり感動します。私も高柳先生に倫理を教えてもらいたかったです!!
コタローは1人暮らし
売れないマンガ家と4歳のコタローの絆の物語
売れないマンガ家・狩野進の家の隣に4歳のコタローが引っ越してきた。4歳なのにパパやママと一緒に住んでいるのではなく、一人暮らしであることに狩野は驚く。大家は家賃を払えるのならと一人暮らしをOKしていた。そんなコタローを同じマンションの離婚をして子供と会えない田丸勇やキャバ嬢として働く秋元美月、コタローの通う幼稚園の先生や狩野の担当編集、コドモ嫌いの女性、なぜか1ヶ月限定で引っ越しをしてきた男もコタローを気にかける。そして、コタローの家には弁護士・小林綾乃が毎週あるものを届けに訪れ、コタローから手厚い歓迎を受けていた。なぜ、4歳のコタローが一人暮らしをすることになったのか?そこには悲しい事実が・・・。
始め読んだ時は4歳児が1人暮らしをしている事実に驚きます。だけど、読み進めていくうちにコタローの家事技術にそんなこと思わなくなる。そんなコタローは初めましての人とお弁当を作れるくらい、人と仲良くなる天才である。コタロー以外にも、狩野など登場人物は全員何かしらの秘密を持っている。巻数が増えるごとに、その秘密の中身は明らかになっていく。それが分かると、もう一度これまでの巻数読み返したくなる。このマンガは何回読んでも飽きない。また、2021年4月クールでは関ジャニ∞横山裕主演でテレビドラマ化されており、ドラマを見て原作を読んでも、この素敵な世界観に浸りつづけることができる。
ゴールデンカムイ
アイヌの隠した金塊を探すサバイバル
明治末期の北海道で、日露戦争から帰ってきた主人公の杉元佐一は幼馴染の梅子の病気の治療費を稼ぐために砂金を取っていたところ、偶然アイヌの埋蔵金のことを知ります。直後杉本は冬眠明けのヒグマに襲われてしまいますが、偶然アイヌ民族の少女・アシリパに助けられます。彼女は自分の父親のウイルクを殺害し、埋蔵金を隠した「のっぺらぼう」からそれを取り返そうとしていました。目的を同じとした2人は手を取り合い、相棒として共に行動するようになります。同じ頃、陸軍第七師団や土方歳三たちもまた金塊のことを知り、追いかけ始め……。
基本的には杉本・アシリパ一行、第七師団、土方歳三達という3団の奪い合いです。かなり登場人物も多く内容も複雑ですが、キャラクター一人ひとりにそれぞれドラマがあり、読んでいて全く飽きません。裏のかきあいをする手に汗握る頭脳戦も面白いのですが、ちょくちょく出てくるギャグ要素には思わずクスッとしてしまいます。また、当時のアイヌの生活文化や少数民族の生活をリアルに描いています。アイヌの洋服や食事、文化、森での狩りの様子などが学べて、読んでいるうちにアイヌの生活にも興味が湧いてくると思います。
3月のライオン
苦しい少年少女時代があった!でも将棋だけはいつも傍にいた。
少年に将棋を教えた親愛なる父も、そして母も亡くした少年。それでも少年を救ったのは皮肉なのか幸運なのか父が遺した将棋の才能だった。引き取られた将棋のプロである父の友人の子たちの才を喰らって少年は恨まれながら疎まれながらプロになった。それでも少年には伽藍堂の部屋があるだけだ。空虚を将棋にしか心を燃やせない少年がある日出会ったのは?!同じく最愛なる母に先立たれ、愛情の薄い父に捨てられ、長女・次女・三女で暮らす三姉妹だった。苦境の中で祖父の和菓子家を手伝い、叔母の店で水商売をして更に家事も育児も一人でこなす長女。いつも笑顔で芯が強く、少年を和ます次女。まだ幼少の三女。将棋を通して交差する人々の情や愛。将棋に対する情熱。どこかで生まれる恋心。少しも退屈させない将棋と人間くさいストーリーがここにある。
見所は少年少女の生い立ちを感じさせない純粋無垢な彼らの性格です。苦しい少年時代を過ごしたのにも関わらず、だからこそなのか真面目で好きな人たちの為なら我が身を投げ打ってでも、彼らを守ろうとする少年にはジーンと感動を受けます。また三姉妹の姉妹愛や、特に次女が学校で激しいいじめを受ける場面では彼女の芯の強さが感じられ、真の強さとはこういうものだ!と涙する。忘れてはならない将棋界。魑魅魍魎と老若が溢れたこの業界ならではのキャラの濃さ。ライバルなのに互いを認め愛する男気。将棋の面白さも興味を誘うように描かれており、終始目が離せない展開。涙も笑いも約束できるストーリーに、少年漫画に関わらず綺麗で繊細な絵のタッチも見所!
自殺島
一度は死を選んだ者たちが生きることとは何かを考える極限のサバイバル劇!
この漫画の登場人物たちは、主人公のセイを初めとして全員が自殺未遂者です。そんな生きる意欲を失った者たちが、政府に処分される形で無人の孤島に送られたところから物語は始まります。自殺を望む者たちが集められた訳ですが、当然自ら死を選らぶ者もいるが、多くはかつて住民が暮らしていた痕跡があるその島で共同生活を始めます。しかしながら、生きてゆくためには食料の確保など、多くの困難が立ちはだかります。しかも、人権を奪われた彼らの世界に法律というものは存在せず、欲望のままに振る舞う者が現れトラブルも頻発する。そんな極限のサバイバル生活の中、セイたちは困難を乗り越えながら生きることの意味を深く考えてゆく。
この作品において個人的に特に気に入っているのは主人公たちがサバイバル生活を送る上で、狩猟採集を行う様子などが具体的に描写されていることです。舞台となる島はかつて有人島で、様々な道具が残されていますから、それを利用していく様も興味深かったです。その中でも自ら木を削って弓矢を作り、山に分け入って鹿を狩るようになったセイの行動は代表的な場面と言えるでしょう。しかもセイは鹿を狩る、すなわち命を奪う行為を通して、自ら生きること、すなわち生命の素晴らしさに気づくのですからとても感動的でした。後に島の運命を決することになるセイの行動においてターニングポイントとなるシーンだったと思います。
終末のワルキューレ
神vs人類?!人類の存亡をかけたタイマンが今始まる!
「人類は今 他ならぬ人類の創造主“神”の意思によって終末を迎えようとしている」ヴァルハラ評議会議事堂では1000年ぶりに世界中の神々が集い、ある会議が行われていた。それは「人類存亡会議」神々の意思により、今後1000年の人類の存続を「許す」か「終末を与えるか」を決める会議だ。この1000年間を見てきた神々は、人類こそが世界を滅ぼす災害であり、人類に救いようはないと全会一致で終末という結論に至ろうしていた。議長であるゼウスにより、決定のガベルが振り下ろされるその時、戦乙女(ワルキューレ)の長姉ブリュンヒルデが「待った」をかけた。そして彼女は神々の決定に異議を申し立て、「神VS人類最終闘争(ラグナロク)」を提案したのだった。
世界中の神々を相手に13人の有名な偉人たちがタイマンを張るファンタジーバトルアクション作品です。人類を創った神に人類が勝てるはずがないと誰もが思うはずです。もちろん神々は人類をなめていますし、私も人類が一方的に負けて凄惨な光景となるのでは、と読み進めることを躊躇っていました。第一戦目は、北欧の最強神・雷神トールVS三国志最強武将呂布奉先。なんとどちらも一歩も引かない好戦を繰り広げます。どちらが勝つのかまったく予想がつかないほどの均衡する実力に、どんどんのめり込んで読み進められます。トールVS呂布の最強対決・激闘を制するのはどちらか、そしてなぜ人類が神と互角に戦うことができているのか、ブリュンヒルデは何を企んでいるのか、次はどんな対戦カードになるのか、人類は勝つことができるのか、ワクワクが止まりません!
ジパング
予測不能な太平洋戦争
本作は太平洋戦争末期の日本に、現代日本の海上自衛隊のイージス艦「みらい」が乗組員ごとタイムスリップしてしまう物語です。高性能装備を備えたみらいは、米軍にとっても自国である日本でもよくも悪くも、戦況を大きく変えてしまうほどの脅威となり危険視されます。戦前・戦後の歴史を知っている主人公達は、本来の歴史の流れに対して干渉すべきか葛藤しますが、いや応なしにこの戦争に巻き込まれていきます。あくまで人道支援を目標とする現代日本の海上自衛隊の面々が、戦下という異常事態の中でどういった行動をとるのかが描かれています。
本作の魅力は、学校では深く学ぶ機会の少ない太平洋戦争末期の出来事と戦下での日本軍の状況を知ることができる点だと思います。日本は戦後一貫して戦力を保持せず、交戦権なしの姿勢を貫いています(日本国憲法9条)。この9条改正が現代日本で議論の的にもなっているわけですが、賛成にしても反対にしても、戦争とはどういうものかを考えてから各主張をすべきです。本作は戦下においても人道支援を行う立場をとる人間の心理状態について描かれており、日本が本当にこのまま現在の姿勢を貫いていくことができるのかどうか、本作を通して考えさせられました。ぜひご一読してみてください!
死役所
全ての死者がやってくる役所
どのような死に方をしても、最終的にやってくる役所。そこには沢山の死者が成仏するためにやってきます。物語に偏りはなくて、虐めで自殺した人や通り魔に殺された人等、死んだ理由は様々です。そこから成仏する人や地獄に落ちる人、永遠にさまよう人に分けられます。短編の集まりのような作品になっており、一人一人なぜ死んで、どのようになっていくのかが描かれています。もちろん、死んだ人達のストーリーや死役所で働いている職員のストーリーも描かれております。実は死役所で働いている人達はある事を受けた人達だけが職員として働いています。メインはいつも笑顔な職員の男性ですが、時折見せる冷酷な眼差しが色々と考えさせれる作品です。
見所のポイントは死役所にやってくる人達がなぜ死んだのかという短編ストーリーです。死に方はそれぞれで、そこにどのような物語があって、死後はどのように手続きするのか。が描かれています。だから、どうするかとか、だから、助けるとかそういうのは無くて、ただ物語がたんたんと進み、そこで読者がどのように感じるかを問いかけるような作品です。メインはいつも笑っている職員さんなのですが、彼の発言がたまに人が生きていく上で大切な事だったりと思わせる内容です。また、死役所の職員達にも悲しいストーリーがあります。死役所の職員になるには、生前にある事をされている条件があり、そこも見所だと思います。
GIANT KILLING
巻き起こせ大逆転!!弱小プロサッカーチームによる大躍進!
かつて栄光を誇ったイースト東京ユナイテッド(通称ETU)は日本代表にまで上り詰めたスター選手・達海猛が移籍するまでは優勝争いにも参加している強豪チームだったが、今では万年最下位争いを繰り広げる二流チームとなっていた。海外へと移籍した達海はそこで選手生命を絶たれる大怪我によりプレーヤーを引退してイングランドでアマチュアクラブの監督となっていた。かつての旧友である後藤はアマチュアクラブでFAカップを勝ち抜くという偉業を達成した達海を弱小ETUの監督へと迎えることに。達海はETUの選手やサポーター達と衝突しながらも、チームを優勝へと導くことができるのか?!
主人公が監督という新しい設定のサッカー漫画となっており、監督からの視点や細やかな戦術など、これまでのサッカー漫画とは違った面白さがあります!もちろん選手達による熱い試合展開も描かれており、戦術に重きを置いた本格的なサッカー漫画となっています!物語の舞台はプロサッカーのため選手達も一定のスキルはあるのですがメンタル面から負け癖がついており、チームを土台から作り直したり、選手一人一人の意識をメンタル面から改革させるシーンが印象的でした!
ジャガーン
欲望のダークヒーロー!
警察官として退屈な日常を過ごす蛇ヶ崎晋太郎は同棲をしている彼女とのこの先の未来をつまらなく感じていた。そんなある日突如として空から「キチガエル」と呼ばれるカエルが大量に降ってくる。そのカエルは人間に寄生し、その人間の欲望をベースに「壊人」へと変貌させる。蛇ヶ崎はキチガエルによって壊人化してしまった彼女に襲われてしまうが彼は腕を銃に変形させ壊人となった彼女にぶっぱなす!彼もキチガエルによって「半壊人」となっていたのである。そこに現れた「ドクちゃん」と名乗る喋るフクロウが「この世に放たれたキチガエルを全部集めれば彼女を生き返らす」と言っている。蛇ヶ崎は殺してしまった彼女を生き返らす決意を決めて、壊人達と戦いを繰り広げていく。欲望にまみれたダークヒーローの物語である。
薄っぺらくて中身の無い主人公が自分の欲望のままに壊人達を次々と殺していく様は、もはや中毒性があるくらいスラスラ読めてしまいます!人の欲望や剥き出しの感情を俯瞰して見ると中には共感するところもあります!この漫画の壊人達は「自身の欲望」を力にする為、それぞれの能力がバラバラで新しい登場人物が出てくる度にワクワクが止まりません!そして、かなり頻繁に女性キャラクターの過激な描写がありますが、エロというよりリアリティ性が高く人間らしさが出ています。エロ要素とギャグ要素も多く詰まった爽快感のある作品となっています!
ジャンケットバンク
銀行の地下に賭博場が?!銀行員×ギャンブラーの異色のタッグ!
銀行とは融資・貯蓄・保険・運用のために大金がうごめき、金にうるさい人間たちが集まる場所。銀行員の御手洗は数字とにらめっこする退屈な日々を送っていた。ミスを犯さない様に堅実で真面目な人生を送る御手洗だったが、ある能力を買われて「特四」と呼ばれる特別業務部審査課へと配属されることに。厳重なセキュリティーをくぐり銀行の地下へと降りると………そこは銀行がディーラーを担う銀行賭博場が?!謎のディーラー・真経津晨の美しくも心沸き立つギャンブルを目撃した御手洗はドンドンとギャンブルの世界へと足を踏み入れていく。銀行員×ギャンブラーによる新感覚ギャンブル漫画!
ギャンブルとは正反対とも思える銀行員ですが、主人公の御手洗は数字の計算などがメチャクチャ強く、ギャンブルに必要な確率計算がずば抜けています!一方で、相方のギャンブラー・真経津晨は心理的な読み合いや狂気的なギャンブルを得意としており、正反対ながらも魅力的なタッグとなっています!また、ギャンブルの内容がどれも独創的なものばかりで、どのゲームも新鮮な気持ちで読む事が出来ます!ギャンブラー同士の対決だけでなく、銀行員同士の熾烈な競争などもあるため、細部まで見逃せないストーリーとなっています!
昭和天皇物語
昭和天皇はどのような数奇な運命を辿ってきたのか。私は知りたいと…思った。
昭和20年(1945年)大日本帝国はポツダム宣言を受諾。昭和天皇の玉音放送をもって日本は敗戦を受け入れて、大東亜戦争を終結した。物語は、太平洋戦争後の昭和天皇と連合軍最高司令官マッカーサーの会見から始まります。昭和天皇はマッカーサーに一言、言います。「私は全責任を負います」マッカーサーはあの日、昭和天皇は命乞いの為私を訪ねたのではなかったと述懐します。かつて世界の歴史上で自らの命と引き換えに、自国民を救おうとした国王がいたであろうか?そして昭和天皇の人生はどのうような人生を辿ってきたのか知りたいと思いました。
物語として昭和天皇の想像を絶する人生を描いた作品です。非常に丁寧で緻密な絵で、天皇というデリケートなテーマを扱っています。平成生まれである私にとって歴史上の人物である昭和天皇の人生を漫画で知る事ができます。昭和天皇の生きた時代背景、幼少期から天皇になる過程とその時代の人々も知る事ができ大変興味深い作品です。マッカーサーに戦争について「私が全責任を負います」と言った背景、自らの命と引き換えに国民の命を救おうとした君主がどのようにしてそのような考えになったのか私もマッカーサーと同様に知りたいと思いました。
親愛なる僕へ殺意をこめて
もう1人の自分は殺人犯なのか?
大学生の浦島エイジは最近の自分の記憶と周りの人間の証言に食い違いが起きている状況に気付きます。そして、同じ大学に通う真明寺麗から「二重人格ではないか?」と告げられるのです。その後、エイジの周辺で過去に起きた猟奇的殺人事件と同様の事件が発生し、さらにエイジは自分の部屋から身に覚えのないお金と血がついた金属バットを見つけます。この状況を踏まえて、エイジは自分が知らないもう1人の人格が、この殺人事件の犯人ではないのか?と疑うようになり、自身でその真相を確かめようとしていきます。また、エイジの父親が犯人とされている過去の猟奇的殺人事件の真相にも徐々に近づいていきます。
基本的には新たに発生した殺人事件の真相をエイジが追いかけていくストーリーですが、同時に自身の父親が犯人とされている過去の殺人事件の真相も明らかになるので、2つの面を楽しむことができます。エイジは自分の父親は犯人ではない、冤罪であると信じているため、その証拠集めに奔走していきます。その中で新たに発生した殺人事件に関することを含めて、多くの信じがたい事実が浮かび上がってくる展開となり、読み手にとっては予想外の状況がどんどん発生していきます。そのため、結末が予想しづらい内容になっており、ドキドキハラハラしながら読むことができます!
進撃の巨人
実は奥が深い!?圧倒的な世界観のバトルアクション!
巨人が人を食らう世界。50mを超える壁に囲まれ、檻の中の鳥の様に守られながら生きる人類。少年エレンは壁の外に憧れていた。父グリシャと母カルラ、そして幼馴染のミカサ・アルミンと共に、壁の中で暮らす平凡な日々。人類は忘れかけていた、巨人の恐ろしさを…。そして、その時は突然やってきた。845年エレン10歳の年。壁を超える巨体の「超大型巨人」によって、100年人類を守り続けていた壁はあっけなく壊されてしまった。超大型巨人によって開けられた穴により、次々と侵入してくる巨人たち。そして、エレンの母・カルラが巨人に食われてしまう。悲しみ、強い怒りに闘志を燃やすエレンは誓う「駆逐してやる……この世から一匹残らず」
有名すぎる漫画なのでご存じの方も多いと思いますが、グロイそうと何となく避けている方もいると思います。この物語の序盤は巨人が人を食らい、あまりの脅威に人類はなすすべもなく、絶望ばかり感じるようなストーリーになっています。しかし、ただ巨人が人を食らっているだけではなく、そんなストーリーの中で巧妙に張り巡らされた伏線が素晴らしいです!一つ一つの何気ないセリフにも実は意味があり、伏線を回収するシーンでは興奮で震えが止まりません!しかも、後半に進むにつれ、巨人VS人類という構図に変化が起きてきます。ただ単に、巨人が人を食らう漫画ではなく、奥の深いストーリーとなっています!
新宿スワン
東京新宿のスカウト達の苦難
東京新宿、スカウトの聖地に文無し・学なし・超がつく程の天然パーマの白鳥龍彦がいた。職もなく腹を空かせて苛立っていた龍彦は新宿で絡んできた男達を相手に暴れているとそこへその男達の上役である真虎と出会う。この真虎との出会いから、真虎の目に留まり新宿を拠点にする大手スカウト事務所「バースト」へ入社することになる龍彦。「バースト」は芸能方面のスカウトではなくキャラクラやホステスなどの水商売やデリヘルやAV女優などの風俗系のスカウトを主としており優しい顔を見せて地獄に落とすようなイメージのスカウトに苛立ちを見せる龍彦だったが、働く女性達の気持ちや事情、スカウトマンとしてできることなどを考えメキメキと頭角を現すのだがその先には様々な苦難が待っていた。
龍彦を「バースト」に引き入れた真虎が渋くも良い味を出しています。ストーリーも初めはスカウトの話のみかと思いきや、様々な人間達の欲望や葛藤さらには長年に渡って綿密に計算されてきた復讐劇など波乱万丈でまさかの展開に予想がつきません。人対人の争いも様々あり見どころ満載なのですが、会社対会社の組織同士での潰し合いなども熱くさせてくれます。特に「バースト対ハーレム」では今後の重要キャラ達も多く出てきますし、龍彦が友好関係になった「ミネルバ」の面々も捨てがたい雰囲気とキャラクターをしていて読んでいて飽きることなく推しのキャラクターがみつけられる作品です。
スキップとローファー
天然みつみのほんわか高校ライフ!ついフフッと笑っちゃう!
石川県の過疎化が進む地域から東京の進学校に合格し、上京してきた岩倉美津未。みつみは自分では自分のことをしっかり者と思っているが、実は勉強以外ではぬけているところも。東京で新しく高校生活を始めるみつみは、完璧な高校生活を送るんだ!と意気込んで入学式に向かうが、早々に駅で迷子になり遅刻のピンチ!そこで同じ制服を着た志摩聡介に出会い、何とか失敗はありつつも入学式を終える。そこで志摩君がみつみに話しかけてくれたことをきっかけに仲良くなり、みつみの高校生活はスタート!同世代とのコミュニケーション経験に乏しいみつみだが、持ち前の明るさに天然も相まって友達も増えていく。勉強、行事、生徒会、、。みつみといればいつの間にかハッピー!そんなみつみのほんわか高校ライフです!
高校生の物語というと、キラキラした恋愛ものやスポーツものが多い印象ですが、スキップとローファーは一味違います!みつみは真面目な子ですが、どこかぬけていて天然です。そんなみつみのキャラクターは読んでいてクスッと笑わせてくれます。みつみの周りのキャラクターもとても魅力的です。クラスメイトの飄々としたイケメンの志摩君、自分はキラキラしたことは苦手だと敬遠しているまことちゃん、中学時代の経験からふるまい方に悩むクールビューティーな柚月や自分に自信が持てないみかちゃん。誰の悩みもどこかで自分も経験したような気がする、そんなものばかり。ああ、わかる、どうするんだろうと思っていると、みつみの思いがけない一言!そしてハッとさせられることも。普段漫画をあまり読まない人にもお勧めしたい1冊です!
センゴク
イノシシ武者の戦国一の挽回物語
主人公仙石権兵衛秀久は、美濃斎藤家に仕える武士であったが、織田家に捕らえられるも、その並外れた体躯から信長に召し抱えられ、秀吉の与力となる。以後秀吉の全国一統を常の戦の最前線に立ち、武勲を挙げ、30代前半で淡路10万石の大名に出世する。しかし、秀吉の九州征伐の先遣隊を指揮する仙石は、秀吉の待機の命令を無視して島津と戦端を開いてしまい、しかも大敗する。その責任を問われ大名から一介の浪人に身を落としてしまう。だがこの漫画の本編はここから始まる。仙石はどのように一介の浪人から挽回し、秀吉の下、再び大名に復帰し、秀吉亡き後も、大名として生き残ることができたかが描かれる。
この物語の主人公仙石権兵衛秀久は不器用で人間臭い。秀吉が天下人になると、周りの武士たちは、体制の中での出世を目指し変わっていく中、人間味を失わずかつ失敗の経験を活かし生き残っていきます。しかしこの漫画の本当の面白しさは秀吉と家康の人間的動揺と成長にあると思っています。秀吉は本能寺の変直後から、自らビジョンを掲げ、その天才ぶりで次々望みを実現していきます。家康は秀吉の才能に屈し、国を守るため服従の意向を固めるも、いつか来るかもしれないその時まで野心を隠し少しずつ自分の立場を高めていきます。天下一統後、秀吉は精神的支柱である母親と右腕である弟の秀長を相次いで亡くします。そこから秀吉の精神的苦境が始まる中、逆に家康は精神的成長を遂げていきます。この対比がこの漫画の最大の見どころです。
創世のタイガ
古代にタイムスリップしてしまった学生たちの運命は?
タイガたち7人の大学生はオーストラリアの旅行中に、発見した洞窟の中で起こった地震によって古代にタイムスリップしてしまう。突然の出来事だった為、何かのアトラクションだろうなどと気楽に考えている者も居れば、生息している植物などからこれは古代に違いないとすぐに気付いた者まで彼らの7人の反応は様々。しかし、マンモスや古代人の登場によって少なくともいつもの世界ではないと気付き始め、そんな世界の中で生きていくことになった7人が、元の世界に戻るにはどうしたらいいのかという以前に、ともかく生き抜くことを一番に考えたサバイバル生活を送ることとなる。
タイムスリップしてしまった学生の中に古代文明に詳しいアラタが居た為に、序々に状況を理解し始める7人ですが、それでもまだ信じられずに勝手な行動をとろうとするレンも居たり、7人が決してまとまっている訳ではないところが話を面白くしています。そんな世界の中で積極的に行動するタイガは、最初は知り合った古代人と身振り手振りで何と意思疎通をはかっていましたが、序々に言葉が理解できるようになり、すっかり溶け込んでしまうという流れからは古代でのサバイバル感がとてもよく出ています。これから先や結末がどうなるのかと常に先の展開が気になる漫画です。
高嶺のハナさん
パーフェクトウーマンの不器用すぎて笑える恋
有名菓子メーカーに勤める高嶺華(たかみねはな)は完璧な女性である。美人でスタイル抜群、仕事もバリバリ、商品開発部のエース。彼女とは真逆のダメダメ社員である弱木強(よわきつよし)をはじめ、男性社員の熱い視線を浴びる存在だ。しかし、内面は恋する乙女。弱木が好きで好きでたまらないのに言えず、思い切ってアプローチしても空回りの日々を送っている。そんな彼女の気持ちに気づいたのが、彼女を勝手にライバル視している天井苺(あまいいちご)。華をヤキモキさせようと弱木に積極的に近づく。さらに、華を勝手に自分の女と思い込んでいる「チャラ田」こと更田(さらた)がからんで、どんどんややこしい事態に…。
バリバリキャリアウーマンの顔と、不器用な恋する乙女の顔のギャップがたまらない。弱木にきつくダメ出しした後で一人「ああ、嫌われちゃう〜」と半泣きになっているところなんてギュッと抱きしめたくなるほどかわいい!対する弱木は、話が進むにつれていい男の顔を見せる。「華が惚れるのもわかる」と思わせてくれて続きを読むのが楽しみになってくる。特に、苺への態度!真っ直ぐで好ましい。そんな弱木に調子を狂わされた「総務部のアイドル」苺が変わっていく様子も見どころの一つ。「私は可愛いんだから、ちやほやされるのは当然!」という嫌な女がこちらも不器用乙女になってしまうのだった。
堕天作戦
隠れた傑作ダークファンタジー
遥か未来、人類と魔族が戦争を繰り返す世界には「不死者」が存在した。主人公はそんな不死者のひとり、通称アンダー。アンダーは元々人間側の道具として戦争に駆り出されてきたが、人間から繰り返される残虐な行いに精神が摩耗していき、廃人同然となったところで魔族に捕らえられた。その後、実験を兼ねた処刑を繰り返されたアンダーだったが、彼と心を通わせた魔族の女性・レコベルの言葉をきっかけに、思考能力や感情、様々な感覚を取り戻していく。そしてレコベルと共に見つけた「星」の謎を追うべく、様々な人々と巡り会いながら放浪の旅を続ける。
この作品は、一言で言えば「隠れた傑作」です。まさに知る人ぞ知る名作、作者の架空の世界を構築する技術には感嘆を禁じ得ません。世界観は複雑で、様々な国家や団体が絡み合うかなり大掛かりなストーリーですが、たとえ1度読んで理解しきれなくても、グイグイと作品に惹かれてしまう魅力があふれています。その言葉に表せないような魅力が、この作品の大きな見所です。戦争が繰り返される世界ということもあり、精神的に余裕がある登場人物は少なく、時に残虐な人間(魔族)も現れるのですが、なぜか誰のことも憎めない…。そんな、世界観だけではなく、人間を表現する技術も非常に優れている作品です。
チェンソーマン
異色のダークヒーローアクション
悪魔が日常に潜む世界に暮らす貧乏少年のデンジは、相棒悪魔のポチタとともにデビルハンターとして借金とりにこき使われていた。しかし、そんな生活はある事件によって一変する。ポチタとの契約によってデンノコ男となったデンジは、”普通の生活をする”という夢を叶えるため、公安のデビルハンターであるマキマの下で働くことに。公安のデビルハンターとして、ダークヒーロー”チェンソーマン”として、同じくデビルハンターの”アキ”やバディーの魔神”パワー”とともに最強の悪魔である”銃の悪魔”の討伐を目指して、デンジは悪魔を宿し、悪魔を狩る。
少年ジャンプのヒーロー漫画らしからぬ野心的な主人公や、写実的な戦闘スタイル、そして圧倒的な画力や個性豊かなキャラクターたちが魅力的です。王道のバトル漫画とは違い、日常に潜む悪魔や陰謀する計画などが、後半に進むにつれ明らかになり、その展開には息を呑むほどの面白さがあります。スピード感あふれる展開の中でもデンジはブレない行動を取るため、こちらも思わず安心してしまいます。
ちるらん
幕末に散った漢たちの鎮魂歌
明治45年、女性記者の市川真琴は土方歳三の真実を知るために新選組の生き残りでかつて2番隊組長の「永倉新八」である杉村義衛が住む北海道小樽市へやってきた。杉村は真実を墓まで持っていこうと考えていたが、彼女が土方歳三の孫だと気づき真実を語り始める。かつて、土方歳三は石田散薬の行商の傍ら、道場破りをしてボコボコにした相手に薬を売りつけながら剣の腕を磨いていた。ある日偶然立ち寄った試衛館で道場主の近藤勇に勝負を申し込む。だが圧倒的な力で土方は敗北するが、そこには土方の求めていたものがあり、土方は試衛館の門を叩く。
物語は土方歳三が試衛館に入門するところから始まるため、新選組を題材とした話では時系列としてはかなり前の段階から始まります。土方が様々な武士と戦い、強くなっていく作品なのですが、歴史上の土方歳三は「鬼の副長」と呼ばれるほど冷酷でストイックなイメージで語られていますが、この作品では純粋に強さを求める武士として描かれています。そして土方だけでなく、芹沢鴨を含む新選組の面々、土方たちと戦うことになる実在した幕末四大人斬りなど様々な武士たちも個々に過去などの物語を丁寧に描かれているのもポイントです。細かいところなど作者オリジナルの話もありますが、かなり史実に近い内容になっていると思います。
沈黙の艦隊
独立国家やまと その正体は?
米第七艦隊所属の原子力潜水艦シーバットは完成後の試運転を指揮官の海江田を始めとする海上自衛隊の隊員が行っていた。その後、海江田は一緒に乗艦していた米軍のライアン大佐を拘束し指揮を自らが取り、艦名をやまとと名乗ることに・・・ここに日本初の原子力潜水艦やまとが誕生する。そしてこの潜水艦自体を一つの国家と見なして独立宣言を行う。そしてついには日本とやまとは同盟を結ぶことになり、アメリカとの軋轢が生まれる。日本国、海上自衛隊、アメリカ、第七艦隊を含めての大掛かりな戦いが発生するという痛快物語。単に軍事のみではなく国際間のやり取りも多彩にあり楽しめます。
潜水艦物の漫画の最高傑作だと思います。見所としては原潜やまとの行動を阻止しようとする米海軍との戦いのシーンが、とてもリアルに描かれています。とくに熟練した艦長同士の知恵を凝らした戦いぶりの描写は見事です。また日本の現在の防衛体制の問題点も浮き彫りになっています。やまとを米軍が攻撃しても海上自衛隊の艦艇は、その攻撃を妨害することしかできない。日本ができるのは専守防衛のみでアメリカに対しては常に弱腰。国家とは何なのか?を考えさせられます。原子力潜水艦を一つの国家として世界に認めさせるというこのストーリーは、日本はまだ独立した国家になっていないという作者の思いが込められたメッセージであると思います。
チ。―地球の運動について―
どうしようもなく血がたぎる、地に関する知の物語。
15世紀のP王国では異端な考えを持つ人は問答無用で拷問や処刑をされてしまいます。その中で、実は地球が規則的に動いている…いわゆる「地動説」をとなえる人達がいました。C教では天動説を信じているので、地動説を信じている人はC教徒の人に捕まらないように、こっそり研究をしているのです。主人公のラファウは12歳で大学に進学するほどの秀才です。ところがある日、フベルトという異端の男と知り合ってから、ラファウのなかの世界や運命が変わってしまいます。これはラファウや地動説を信じる人達の時代を超えたとてもアツい物語。
この物語は地動説が表向きのテーマですが、実は宗教や哲学もかなり関係しています。ラファウが知り合ったフベルトは「神が作ったこの世界は、きっとなにより美しい」とラファウに伝えます。異端だけど、神の存在を信じているのです。それなのに異端審問官(異端を捕まえて取り調べる人)は、仕事と割り切ってフベルトを捕まえます。「信じる」とは何なのか。人を救うための宗教なのに人を追い詰めたり傷つけたりするのは何故なのか。いろいろ考えさせられる物語です。そしてフベルトをはじめ、この登場人物たちの語る言葉がとても哲学的で、とても心に残ります。最後はどうなるか見当もつきませんが、信じる者は救われてほしいです。
TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには
世界最強の男はコンビニのバイト店員?
コンビニでバイトをしながら美大の受験を目指す川端強(TSUYOSHI)は、長身でもなく筋骨隆々という訳でもない、見掛けは冴えない眼鏡の青年です。しかし、いざ格闘になると無類の強さを発揮し、どんな相手からの挑戦も受け、負けるどころかパンチの一発もまともにもらったことがないという無敵の強さを誇っています。一方で、本人は格闘家を名乗ることもなく、むしろ平穏に暮らしたいと考えており、その邪魔をする相手を退治しているに過ぎません。しかし、そんな平穏は何処へやら、その噂を聞きつけた色々な相手が次々と強の前に現れては戦いを挑まれるという毎日になってしまい、あまりの強さから、遂には国家レベルの話にまで発展して……。
見た目は全く冴えない青年が実は中国拳法“太極拳”の達人で、どんな相手であろうと簡単に勝ってしまうという無敵の強さが見ていてとても面白い作品です。「売られた喧嘩は全て買います」と豪語しているものの、喧嘩や格闘を好んでいるという訳でもなく、平穏に暮らしたいが為に嫌々ながら戦っている強ですが、いつの間にかその強さが世界にも知れ渡っているといった話の展開から、この先どうなってしまうのだろうと続きをとても楽しみにさせてくれます。本人の気持ちも知らず、無敵の強さだけを強調されてしまう強の心情もうまく描かれており、単なる格闘をテーマにした作品ではない、異色のエンターテインメント漫画です。
テルマエ・ロマエ
日本の最新のお風呂文化を古代ローマ時代に再現!?
古代ローマ時代のお風呂技師のルシウスは、新しいテルマエの設計に悩んでいました。テルマエについて悩んでいると必ず激しく吸い込まれる感覚を最後に気を失って、目覚めると見たことのない世界に行ってしまいます。その世界とは、時空も国も超えた現代の日本なのでした。何も分からないし、言葉も通じない。でも『平たい顔族』がお風呂に対して並々ならぬ情熱を注ぎ、様々な工夫がされていることをルシウスは実感します。出会う人々に助けられながら、お風呂文化を学んで古代ローマに戻って再現しようと必死になります。古代ローマに戻り、現代日本のお風呂文化をアレンジしてテルマエを作ったところ大盛況になります。それが皇帝ハドリアヌスの目に留まり、ハドリアヌスの求めるテルマエを作るようになっていきます。
古代ローマとお風呂をテーマにした漫画です。現代で浴槽に浸かる文化を持つ国は少ないですが、古代ローマでもテルマエという公衆浴場で浴槽に浸かる文化があったことをこの漫画で知りました。この作品の面白いところは、様々なパターンでルシウスが吸い込まれていくところです。次はどんなパターンで、どこに現れるんだろうと読むたびにワクワクしています。ルシウスを助ける人たちは、みんな優しい人たちばかりで言葉も通じないのに一生懸命になっているところを見て、これが日本人の良いところなのかなと考えさせられる作品でもあります。
東京喰種
人間と喰種の狭間で、成長と葛藤の物語
物語の舞台、東京には人間社会の中に人を喰らう正体不明の喰種(グール)という生き物が蔓延していた。主人公・金木研は人間として平凡な日々を過ごしていたが、ある日出会った女性・リゼにより襲われるが、偶然リゼの頭上に落下した鉄骨が落下したことにより瀕死の重症は負うものの一命を取り留める。しかし病院に運ばれた際重傷であったため、医師の判断によりリゼの心臓が移植されてしまう。目覚めてから今までの口にしていた食べ物が食べられなくなり人間の肉を欲してしまう金木。気づかぬうちに半喰種となってしまった彼の成長と葛藤がここから始まる。
最初は捕食シーンなどが多く怖いイメージがあるかもしれないが、物語が進むにつれそ手が気にならなくなるくらいの友情や恋愛など人間ドラマが繰り広げられています。喫茶店「あんていく」で働く喰種たちそれぞれにいろいろな背景や思いがあり感動するシーンも多く、金木は人間であり喰種でもあるのでどちらの気持ちもわかるが故の葛藤に心打たれる場面もたくさんあります。ラストのシーンは涙なしでは見られないです。グロそうだからと避けずに、多くの人に見てもらいたい作品です。
ドラフトキング
ドラフト会議のドラマを作るのは俺たちだ!
郷原眼力は横浜ベイゴールズのプロのスカウトマン。この男こそが売れるプロ野球選手を骨の髄まで知り尽くす。眼力と書いてオーラと読むキラキラネームのスカウトマンだ。芸能人は歯が命、スカウトマンは眼が命だと言い切る彼が、リストアップする選手は各球団が獲得を目指す競合選手ではない。なぜこの選手を!?彼の眼は選手の何を見ているのか!?謎がどんどんと解き明かされて行く。高校野球、大学野球、社会人野球そして独立リーグ、あらゆる年代、地域の野球選手を調べ尽くし、彼の眼が選手の才能を見抜く!そして、その年のNo.1選手、ドラフトキングの獲得を目指す異色の野球漫画。
一般的な野球漫画は選手が主人公で、その選手が才能や努力の末に勝っていくような内容がほとんどだと思います。しかし、この漫画はスカウトマンが主人公という異色の漫画になっています。毎年、ドラフト会議はどの球団がどの選手を指名して、そしてその選手がプロ入りしてどういう活躍をするのか?様々なドラマがあります。そのドラマに至るまでのスカウト視点での選手の分析の過程とプロ入り後の選手について等々、いわばドラフト会議の裏側を見ることが出来ます。この漫画は野球が好きであれば好きであるほど、ハマってしまう、そんな漫画だと思います!
ドリフターズ
歴史上の猛者たちが異世界に飛ばされた!
関ケ原での撤退戦・島津の退き口にて、島津豊久は異世界へ飛ばされる。そこで出会ったのは、何と織田信長に、那須与一。歴史上有名な武将らだが、時代が違って本来なら出会うことはなかったはずなのに異世界で一堂に会してしまった。そして、異世界で虐げられている亜人たちと共に戦いへ身を投じることとなる。日本史のみならず、世界史からも歴史の著名人が登場し、一癖も二癖もある猛者たちがそれぞれの知略と武力をもって衝突する様は圧巻。ただの戦いや軍略ではなく、かつて歴史に名を刻む程の戦人がそれぞれの武器を取り戦うアクションファンタジー。
歴史にそこまで詳しくなくとも知っている武将や著名人が登場するので、歴史ファンでなくても楽しめます。主人公の島津豊久、織田信長、那須与一といった戦国武将はもちろん、菅野直や山口多聞など戦時中の軍人、西部開拓時代の列車強盗団・ワイルドバンチ強盗団、カルタゴの将軍ハンニバル、ローマの用兵家・スキピオなど、日本だけではなく世界で様々な活躍をした有名人が登場します。日本史や世界史で有名だといっても、同じ時代に生きてはいなかったはずの戦人が、異世界で同じ瞬間に存在していると言う面白さ。敵対勢力にも歴史の武将らが揃い、エルフやドワーフといった亜人や人間たちを加えて全面戦争が巻き起こるという、本格アクションとダークファンタジーが見事に融合した素晴らしい漫画です。
夏目アラタの結婚
シリアルキラーとチンピラ児相職員の獄中結婚サスペンス!
主人公は児童相談所の職員・夏目アラタ。ヤンキー上がりのアラタは虐待疑惑のある親に掴みかかるなど問題行動が目立ち、日々上司に叱責されていました。ある時アラタは担当児童の卓斗から、父親を惨殺した殺人犯・品川真珠に面会してほしいと頼まれます。品川真珠は交際相手を次々手にかけてはその死体を遺棄しており、卓斗の父親の首はまだ見付かっていません。卓斗に泣き付かれたアラタは渋々真珠と面会するも、彼女が報道と違い儚げな美少女であるのに驚きます。アラタは掴み所ない真珠の気を惹く為に「俺と結婚しようぜ!」と発言、真珠はこれを笑顔で承諾し獄中結婚の成立に向け動き出します。
児童相談所のヤンキー職員と拒食症で乱杭歯のシリアルキラー、どう転んでも面白い組み合わせに惹かれました。キャラクターがとても魅力的に描かれており、虐待されている子供の不細工な笑顔を愛しく感じるアラタの優しさや正義感が素敵です。真珠のエキセントリックな言動も恐ろしく、有罪なのか冤罪なのか、他に真犯人がいるのかいないのか、二転三転する疑心暗鬼の展開がサスペンスを盛り上げてくれました。卓斗の父親の首を見付ける為婚約者を自称して真珠を欺いていたアラタが、意に反して彼女に惹かれていくジレンマにも引き込まれました。
ナナとカオル
高校生によるSMの境地
ナナは生徒会で活躍する、文武両道のエリート高校生。その幼馴染であるカオルは童貞で女子からキモがられる冴えない高校生。この2人はアパートの隣同士で、ひょんなことからナナはカオルのSMグッズを壊してしまう。そこから2人の「息抜き」と言われるSMプレイが始まっていく。最初は妄想ばかりしていたカオルが、現実化していくナナの姿に興奮しながらも、SMの境地を目指して奮闘する物語。ただ縛るだけ、ただ写真を撮るだけ、それだけなのにエロくなってしまう甘詰留太の代表作。一度見たらハマってしまう高校生SM入門物語!
まずSMと行くと、アダルトな作品を連想してしまう非血が多数を占めます。しかし、この物語は高校生のお話。過激すぎる描写はあまりにも不釣り合い。そこで甘詰先生の出番、アダルトに描かなくてもエロいタッチ、表現、角度、全てをわかっているからこその漫画になっています。簡単にSMプレイなんて言っていますが、カオルくんの念入りな準備段階を見ると、これも一つの愛なんだなと思ってしまうほど大変です。SMの見方が変わると言っても過言ではないです。特に縛るための縄を準備するシーンは、縛る時間よりも準備期間の方が長いという大変さ、正直驚きました。
信長のシェフ
現代の料理人がタイムスリップして出会う織田信長との物語
戦国時代で目覚めた主人公ケンは記憶を失っていた。そして野党に追われるところから物語は始まる。野党に追われ川に飛び込んで逃げたケンを助けたのは刀鍛冶の夏だった。夏の家でケンは意識を取り戻すが、自分が何者なのか名前すら思い出せないのに、現代の料理に関してだけは覚えていて、何故か現代から戦国時代にタイムスリップしたのだと自覚する。夏の住む長屋で体を治しながら、近所に料理を振る舞っていたのだが、それが評判になり、やがて織田信長の耳にも入る事になる。料理の腕を見込まれ、現代の知識を持ったケンが信長の直属の料理人として雇われることになり、物語は進んでいく。
現代の料理器具もない、調味料もない戦国時代の世にタイムスリップしたケンが、何故か残っている現代の料理知識を駆使し、創意工夫をしながら信長たち戦国の武将たちに料理を作っていくのだが、その料理を作る事で培う戦国の世での自分の役目。いきなり現代の料理を食すことで感動していく戦国武将達が織りなす物語。現代の人間であるケンが初めて味わう戦場での命のやり取りとその恐怖。後に戦国の世を制定する織田信長という真の武将の目的。そしてその周りを取り囲む豊臣秀吉、徳川家康、明智光秀等の家臣達とのそれぞれに対するストーリーは毎回ハラハラドキドキのオンパレード。現代の世では、本能寺の変で命を落とすはずの織田信長は、現代人ケンと関係する事でどう歴史が変わっていくのか。そしてケンの記憶はどうなっていくのかが見所です。
信長を殺した男~本能寺の変 431年目の真実~
明智光秀の子孫が描く真実の物語
戦国最大のミステリーである「本能寺の変」の真実について明智光秀伝承の会事務局所属の明智憲三郎が著者である。明智光秀が織田信長の逆賊として後に豊臣秀吉として天下統一を成し遂げる羽柴秀吉が討ち取るところから物語は始まる。光秀を討ち取った秀吉はその4ヶ月後お抱えの御伽衆に「本能寺の変」の顛末である『惟任退治記』を書かせ公式発表したことで、後の世に真実の物語として広まったのだ。秀吉は英雄として、光秀は逆賊として歴史の真実が書き換えられたのだ。非業の死を遂げた明智光秀であるが、阻止した信長の企てとは。裏切り秀吉の内通者となった男とは。最後まで援軍を頼った男の深い関わりとは。『本能寺の変』を起こした真実の動機とは一体。そもそも明智光秀とは何者だったのか。431年目の真実を追う物語だ。
授業や歴史の資料で知っていた内容とは全く内容がかけ離れており、とても魅力的な作品だと思います。今まで織田信長を暗殺した男、歴史物のゲームでも冷たい男や変に癖がある男だと描かれていることが多いためマイナスのイメージしか持っていなかったこの作品を読むことによってその印象ががらりと変わります。まず明智光秀という男はとても仲間思いであること。織田信長に自分の立場など関係なく進言するシーンはドキドキしながら見てしまうと思います。また、とても戦上手であるということ。光秀がいなければ勝つことができなかった戦は確実にいくつかあるだろうと思ってしまいます。
ハコヅメ~交番女子の逆襲~
必ずくると思っていました。2021年ドラマ化作品です。
主人公・川合麻依は新人警察官。しかし、余りの激務と職場不条理に耐えかねて、辞職することを決意していました。そんな中、新しくペアを汲むことになる藤という女性と出会います。元刑事課に勤務していた彼女の指導の元、警察官として成長していく川合でした。とはいえ、まだまだ不条理が残る警察官社会。体力的にもきつく、残業などは当たり前な職場です。時に毒を吐きつつも、持ち前の天真爛漫さで前向きに進んでいきます。舞台は架空の県、岡島県。その片田舎である町山署で繰り広げられる、ブラックユーモアたっぷりの警察官コメディです。
実は作者は元警察官なのです。そのため、出てくる描写が軽妙にリアル。警察物はたいていシリアス展開が多いですが、ひたすらに笑える展開になっています。ずっと読んでいて「これはどうしてドラマ化しないんだろう」と不思議なくらい面白いのです。ドラマ化が決定したときは「やはりね」と思いました。登場人物たちの台詞のキレが笑ってしまう方向にキレがいいです。多くの人物が登場しますが、それぞれ個性がたっぷり。アクが強いくらいの個性なので、そのためドラマ化が難航していたのかと思っていました。17巻と同時発売された「アンボックス」もおすすめ。こちらはスピンオフという形ですが、テイストは全く違う作品です。
働かないふたり
世界一周して夢が出来た、そうだ、ニートになろう
ここに深夜になってもゲームに熱中する兄妹がいる。明日のことなど気にしない、、、なぜならふたりはニートだから!スキル高めのはずなのになぜかニートをしている兄と人見知りがなかーり強めの妹が昼夜逆転生活のなかで、カレーを作ったり、ゲーム合宿をしたり、朝になったらゴミ出しをしたりと楽しく毎日を過ごしている。母には働いたらとせっつかれるが、父はこの兄妹のありのままを受け入れ、時には癒され楽しんでいる。そして、すぐそばにも癒されている人がまたひとり。不眠に悩んでいたその人は、深夜になっても楽しそうなふたりの姿になぜか安心感を覚え、安眠できるようになる。ところがある日、ゴミ出しの時間がかぶってしまい、挨拶する?しない?こっそり癒されるだけの存在だったふたりとお近づきになってしまうのか?!
ニートをテーマにしているので、賛否両論あるかと思いますが、ふたりを見ていると楽しそうだし、ゆったりした気持ちになれてかなり癒される!最初はふたりで遊んでいるけど、だんだん関わる人が多くなっていく毎に楽しさも倍増していって、大人がどんどん自由になっていく様を見るのが楽しい。働いている友達も子どもがいるママも近所のじいちゃんばあちゃんも老若男女いろんな人がふたりと関わりながら余裕を取り戻していくところがグッとくる。お金をかけなくても楽しめる方法をたくさん知ってて豊かだなぁと羨ましくなったり、基本ギャグマンガでちょっと下品な表現もあるけど、ホロッと泣かせてくる回を挟んできたりして、何回でも読みたくなってしまう。このマンガは全巻持っているほど大好きなので是非一度読んでみてほしい!癒されること間違いなしです!
バトル・ロワイアル
クラスメイトと殺し合い!?理不尽な法律の元に繰り広げられる壮絶なデスゲーム!
中学生の七原秋也が住む大東亜共和国では、表向き防衛上のシミュレーションという理由で、中学三年生の1クラスをランダムに選出し、プログラムと呼ばれる殺し合いをさせていた。秋也たちは修学旅行で胸を躍らせていたが、旅行中のバスの中で強烈な眠気に襲われ、目覚めたら見知らぬ廃校にクラス全員が移動させられていた。自分たちが「プログラム」に選ばれてしまったことに愕然とするクラスメイト達。殺し合いをし、最後に生き残った一人だけが帰宅を許されるという過酷な条件に、仲間は正気を失っていく。秋也は転校生川田章吾、命を落とした親友・国信の思い人・中川典子と共闘、ゲームから脱出しようと試みるが…!?それぞれのクラスメイトの命懸けのバトルが展開する衝撃作。
超人級の激しいバトルと性描写も付加され、登場人物は中学生ですが青年向けにアレンジされた濃厚な作品になっています。一方で魅力なのは、主人公・七原秋也の絶望の中での前向きさです。その前向きさは、脇役の天才ハッカー三村や、拳法の使い手の杉村、何でもできて知識人の川田といった人気キャラクターが絶大の信頼を寄せる人物として描かれています。秋也だけではなく、彼と行動を共にする典子の明るさからも、希望をもって一生懸命考えることの大切さを教えてもらえます。原作のエピソードを細かく膨らませたストーリーや、迷いを持ちながら生きてきた生徒たちが、理不尽から何かを悟り、精神的に成長していく姿も見どころの作品です。
バトゥーキ
カポエラVS異種格闘技!!
小学生の三条一里(通称いっち)は両親から束縛され、鬱屈した日々を過ごしていた。ある日、彼女は公園でカポエラを披露する老人に出合い、その動きに魅了される。同年代の仲間たちと共にいっちはカポエラを学ぶが、老人は別れの挨拶もなく唐突に姿を消してしまう。同時に、自分を束縛する両親が本当の両親ではないこと、自分はブラジルマフィアのボスの娘であることを知る。育ての両親をB・Jと名乗るマフィアに人質に取られたいっちは、強くなることを強要される。いっちは同じマフィアのボスの娘たちと遺産をかけて争う宿命があった。時は流れ、高校生となったいっちは、B・Jの指示の下、インターハイチャンピオンを襲撃する。負ければ育ての親の指を切断……。B・Jが選んだ強者たちといっちの戦いは始まった。
登場するキャラクターが強烈すぎます!悪役やサブキャラも妙にキャラが濃い。例えば、いっちの育ての親を監禁し、いっちを脅迫するマフィアの構成員B・J。凶悪な男だが、いっちのことを何故か娘扱いし、心霊写真に怯えるなどコミカルな面を見せる。自分と同じ髪型の人間を集め「B・Jカフェ」を経営するなどギャグ漫画のような展開を見せるかと思えば、自分を襲った者を容赦なく殺害するなど、冷酷な面を見せる。他にも、悪軍鉄馬。半グレのボスであり、どんな格闘家も喧嘩でのしてしまう、B・Jが選んだ強敵の一人だが、敵味方問わず暴力でめちゃくちゃにしてしまう狂戦士の一面をあれば、寿司屋で麻薬中毒の店員にお茶を溢されても「あちぃじゃねえか~」で済ます度量も併せ持つ。他にも、敵・味方問わず魅力的なキャラクターが多数登場します!
バトルスタディーズ
PL学園をモチーフに?!優勝候補の強豪校によるリアルな野球生活!
主人公の狩野笑太郎は中学野球の日本代表にも選ばれる才能の持ち主で、野球強豪校のDL学園から特特生のオファーを受けることに。元々DL学園に強い憧れを抱いていた狩野はそれを受けDL学園に入学し、甲子園優勝という輝かしい栄光を思い描いて、DL学園・野球部寮へと入寮した!しかし、そんな狩野を待っていたのはDL学園野球部の厳しい規則と上下関係だった!奴隷の様な扱いを受ける1年生、逃げ出す者が何人も出る中、憧れの先輩達の素晴らしいプレーを間近で見て、自分もいつかレギュラーになりDLのユニフォームを着るんだという思いから厳しい規則と練習に耐え続ける狩野。しかし……甲子園大阪予選のある日、事件が起きる?!
PL学園という実在する強豪校をモデルとしているため、生活からメニューまで非常に管理された野球漫画かと思いきや、読んでみるとコメディ要素が強くて非常に面白かったです!個人的に1番面白かったのは、放課後の練習前になんとか水が飲みたい1年生達が、先輩の前では水を飲んではいけないというルールを守る為、各々がなんとか隠れて水を飲むシーンには声を出して笑ってしまいました!それとは逆に、DL学園の厳しい規則が外部に漏れ1年生の飲酒運転による事故と重なりDL学園は一気に境地に立たされます。3年生にとっては最後の甲子園予選も、途中で断念せざるを得なくなるのを監督から選手に伝えるシーンはとても泣けました。
花の慶次 -雲のかなたに-
戦国一の快男児・前田慶次の熱い生き様!
物語の舞台は戦国、日本各地を名だたる英雄たちが群雄割拠していた戦乱の時代より少し後。織田信長の元で徐々に頭角を現していた秀吉が、信長亡き後に天下人の地位に登りつめようとしていた頃。主人公である前田慶次は秀吉に仕える家臣・前田利家の甥で、史実上でも戦国一の傾奇者(かぶきもの)と言われた男。傾奇者とは華やかで目立つ装いを好み常軌を逸脱した行いに走る変わり者、といった意味で使われる言葉ですが、そんな傾奇者である慶次の華やかで刹那的でありながらも戦国時代を生きる男としての芯の通った豪胆な生き方や、当時を生きた様々な人間たちとの出会い、別れ、怒り、悲しみ、喜び、といった人間模様がドラマチックかつダイナミックに描かれた作品です!
なんといっても主人公・前田慶次の人間としての生き様がこれ以上ないほどに爽やかに、華やかに描かれているところ。強いものに巻かれるのを嫌い、まるで風や雲のように自由に飄々と生きる彼の姿は現代の日本に生きる我々から見れば何とも羨ましく憧れてしまうような存在ですが、友のため、愛する女のため、自分の信念のために命を惜しむことなく戦場に駆け出す姿には、男として、武士としての潔い生き様が感じられます。登場人物は実在の有無に関わらず一人一人にしっかりと感情移入できるポイントがあり、その深い人間ドラマにページをめくる指が止まらなくなってしまいます。土埃と汗の舞う様子が想像できるような勢いのある戦場でのシーンや、慶次のたくさんの女性たちとのラブロマンスなど、見どころでいっぱいです!
パリピ孔明
天才軍師は無名の歌姫とスターダムを駆け上がる!
現代渋谷に転生した諸葛亮孔明。ハロウィンの日に渋谷では浮くはずもなく、周りのパリピたちに誘われるまま爆音鳴り響くクラブへと吸い込まれていく。そこでひとりの無名の歌姫に出会い魅了される孔明。彼女の夢を叶えるため、孔明の本領が現代で発揮される!最初は戸惑うものの孔明の力がホンモノだと認めると、その力を借りて、歌姫は成功へのステップを着実に踏んでいくライバルとの戦い、自分との戦い、いつでも孔明が知恵を貸し、時には自らの手でチャンスを掴み取りながら、無名の歌姫は真の歌姫になれるのか!三国志ネタをよく知らなくても楽しめる!異世界転生サクセスストーリー!
やり尽くされている感のある異世界転生ものだけど、偉人が現代に来ることでファンタジーではないリアルな魅力を出している。孔明は軍師なので、戦の無い現代日本では役に立たないかと思いきや、歌姫をプロデュースするという天職と出会って、存分に力を発揮するところが見ていてワクワクする!次はどんな方法があるんだろう、上手くいくのかな、と感情移入しながら読んでいるとギャグっぽいところがあるにもかかわらず感動してしまう。音楽をテーマにしているから、もしこれからアニメ化されて、曲や歌詞がついたら更に面白い作品になると思う!
ピアノの森
森のピアノを弾いて育った少年が世界に羽ばたく
「森の端」という風俗店が立ち並ぶ歓楽街の中、劣悪な環境に生きる少年・一ノ瀬海。海の一番の楽しみは森のピアノを弾くことだった。幼少期、森に捨てられたピアノを偶然見つけ、独学で弾き続けていた。そんな中、小学校で音楽教師の阿字野壮介と出会う。彼には天才ピアニストと呼ばれながらも事故で手を負傷しピアニストの道を断念したという過去があった。阿字野との出会いをきっかけに、海はピアニストを目指すことを決意する。海は阿字野の指導を受けピアノの腕を磨いていく。そしてついに世界最高峰のコンクール、ショパン国際ピアノコンクールへ挑戦することとなる。
この作品には、雨宮修平という少年が登場します。主人公の一ノ瀬海にとっては、初めてのピアノを弾く友だちとなった。天性でピアノを弾く海とは対照的に、まるで機械のように楽譜通りに弾く雨宮。親がピアニストで幼少期から厳しいレッスンを受け、コンクールでは敵なしだった雨宮の前に現れた海。雨宮は海の演奏を超えなければ、と自分を追い込んでいく。彼の苦心の描写は真面目にやっているのに報われない気持ちになる社会人には共感できます。雨宮の他にも、主人公以外の登場人物の描写が細かい点が、この作品の深みとなっているのだと思います。
ヒストリエ
有名人も惚れ込む紀元前の史実を交えた歴史超大作!
自身の出自を知らぬまま、富裕層一家の『実子』として育てられていたエウメネスは、大人でもあなどれないほど、頭の回転がよい子供。しかし、ある事件がもとで「奴隷」として売られ、波乱万丈の少年期を過ごすことに。やがて、剣術に長けた自由民の青年へと成長した彼は、時のマケドニア国王フィリッポス二世にその知略を買われ書記官の座を得る。のちのアレキサンドロス大王や、歴史上の重要人物に囲まれながら、戦場でもすぐれた機知を発揮するエウメネス。王の『右腕』として出世コースを歩むが、策謀によって恋人を王に横取りされてしまい、、、紀元前300年頃にマケドニアで活躍した実在の人物『カルディアのエウメネス』の生涯を、フィクションと実話を絶妙に織り交ぜながら描く、歴史超大作!
頭がよくてちょっと斜めな性格の主人公がとても魅力的! さまざまなところに伏線がちりばめられていて、『お、ここでこうくるか!』と読み進む楽しみがあります。戦場の『描写』が美しく図解も上手なので、歴史モノや戦いモノが苦手な方でも、すんなり読めること請け合い。そして、とある村の戦いで見せた、エウメネスの戦略がすばらしい。また、ヒストリエは、ネットでバズった「ば〜〜〜〜っかじゃねえの」や「よくもだましたアアア」というセリフの、もとネタでもあります。独特の間とコマ運び、キラリと光るユーモアはこの作者ならではの味。
姫乃ちゃんに恋はまだ早い
ちょっぴりおませな姫乃ちゃんの勘違い片思い!
4年2組相川姫乃は大人の恋愛に憧れているちょっぴりおませな女の子。隣の席の堂本逢司に片思いしており、勇気を持って体育館裏へ呼び出すことに…⁈逢司の事を考えて寝不足でお肌の調子もいまいち。「責任とってよ」と斜め上の告白に逢司は罰金をとられると勘違い!?というのも、学校での姫乃は大人ぶるお姉さん気質で普段叱られている男子にとっては狂暴な存在。乙女心を間違った方向へ走らせる姫乃は、逢司に猛アタックをしかけるのだが…?逢司の子供特有のゲームやカードの遊びに交じり、どうにか一緒に遊べるように頑張る姫乃。鈍感な逢司にはその思惑は伝わらないのだが…印象は見る見るうちに良くなり!小さな恋心に逢司は気づく日が来るのか?おませでツンデレなラブコメディ漫画!
姫乃は映画やドラマに強い憧れを抱いており、ちょっとした事で脳内でドラマ等のシーンを連想し、それを再現しては顔を赤く染めてしまうなど可愛らしい女の子です。小学生男子の好きな事はゲームやスポーツなので、姫乃にとって真逆の世界でした。それでも一緒に何かして遊びたい彼女は逢司のグループに混ざって遊ぼうとします。テレビ等で見る委員長的存在の女子が男子を注意していますが、姫乃はそのタイプであり、逢司も彼女が苦手でしたが少しづつ印象が柔らかくなり、友達として接するようになります。次第に目的を忘れて遊んでいる姫乃は大人ぶっていても子供であることを感じさせ、逆に姫乃の事を意識し始めている逢司が大人になっていくのが作品の見どころだと思います。甘酸っぱく微笑ましい内容をお求めの方にお勧めです。
ピンポン
ヒーローは必ず現れる!!卓球少年の感動の青春物語!
主人公の星野裕(通称ペコ)は幼馴染で同級生の月本誠(通称スマイル)と片瀬高校に通い卓球部に所属していた。同じ県内の辻堂学園に中国から留学生が来ることを知った2人は偵察に行くことに。昔から敵なしで大した練習をしなくても試合で勝てていたペコだったが、それも中学生までの話だった。留学生の孔文革(通称チャイナ)に一点も取れずに負けてしまう。その後、神奈川県予選でも旧友の佐久間学(通称アクマ)と当たり再び負けてしまう。自分の才能に自信を失ったペコは卓球を辞めてしまうが……。ヒーローは必ず現れる、二人の少年が夢を追いかける青春卓球漫画!
序盤ではペコよりもスマイルの強さが目立つ本作品ですが、ペコが再び輝きを取り戻していく過程はメチャクチャ興奮します!かつて3人の中で1番強かったペコ、気づけば1番弱くなってしまっていた事にショックを受け辞めてしまったペコに佐久間が説得に行くシーンは男の熱い友情を感じました。また、立ち直ったペコが卓球にのめり込んでいく成長スピードはまさに才能の塊で、ドラゴンとの対決で更に才能を加速させていく場面はとても興奮しました!ラストにかけての物語の盛り上がりは最高で、後半の試合はシビれること間違いなしです!
ふたり ソロキャンプ
おじさんとお嬢さん 2人だけど1人のキャンプ
キャンプ初心者の20代雫が偶然に出会ったおじさん・厳さんにソロキャンプのノウハウを教わりながら成長していく話。キャンプの知識も細かいところから、これから始めようと思う人には分かりやすいキャンプギア紹介の回もあります。森や海などのキャンプは自然の描写が素敵でイメージがわきますし、なにより美味しそうなキャンプ飯が参考になります。ソロキャンプしたい厳さんを説き伏せて、場所を変えて、初心者の雫がキャンプのやり方や楽しみ方をいろいろ教えてもらいながら対応していく、師匠と弟子のそんな関係の話です。
ソロキャンプを愛する厳さんのいかつい体格と信念に対して、ナイスバティの若いはしゃぐ感じの雫の、掛け合いがテンポよく、読みやすいです!また、私自身はファミリーキャンプをするのですが、この本を読むとソロキャンプの魅力が伝わってきて行きたくなります。もちろん、リアルで使えるキャンプ飯は参考にさせていただきました。簡単でマンガのキャラの表情通り、とても美味しかったです。さらに豆知識が豊富で、本も読まずに始めた私には初めて知ることも多く勉強になりました。キャンプを始めようと思ってる方や、現在家族で楽しんでる方にとっては、新しい世界への一冊になると思います。
ブルーピリオド
「青い世界」を見た高校生
高校に通う屋口八虎は成績にも友達にも恵まれ、何不自由なく日々を過ごしていました。ある日、忘れ物を取りに美術室へ入った八虎は、先輩の描いた一枚の絵に目を奪われる。そんな中、美術の授業の課題で「私の好きな風景」を題材にした絵を描く事になった八虎は、友人たちと徹夜した帰りに見た渋谷の街が青色に染まって見えた風景を描く事にした。言葉では伝わらなかった朝の渋谷の雰囲気が、絵を通して周りに伝わった事が嬉しく、八虎は思わず涙を流してしまう。その事がきっかけとなり、八虎は今まで自分の進路の選択に入ることのなかった東京藝術大学を目指す。
何事にもほどほどで本気を出してこなかった主人公が、絵を通して自分が夢中になれる事を見つける姿や全力でぶつかってもまだまだ先の見えない芸術という世界の深さが描かれています。美術系の大学の最高峰である東京藝術大学をはじめ、実在するアート系の学校や芸大受験についても描かれているので、実際に美術系の進路に進もうと思われている方には、物語の世界を楽しめるだけでなく参考にもなる作品です。作中に登場する美術の道に進む友人やライバルの存在も多彩で、物語が進むにつれてそれぞれのキャラクターについても詳しく描かれていて、どんどん物語の世界に奥深さが増していきます。
BLUE GIANT
静寂の中で響き渡る音の世界!ジャズに魅了された青年の本格JAZZ漫画!
友人に連れられて初めて聴いたジャズ演奏。ジャズの世界に初めて触れたあの日、俺はジャズにうたれてしまった。高校3年生の宮本大。皆が大学受験へと忙しない生活を送る中、大はひたすらに河川敷でサックスの練習をしていた。雨の日も雪の日も、大はサックスを吹き続ける。感情を音に乗せて爆発させるジャズ、どの音楽よりも激しく自由なジャズ。大は愚直に世界一のプロジャズプレイヤーへと歩んでいく。夢・情熱・若さの詰まったJAZZ漫画。
人と音が紡ぐ、どこかノスタルジックな雰囲気のある物語です。時代背景自体は現代とほとんど差はありませんが、何故か懐かしいような、失ったものを思い出させてくれる様なストーリーになっています。また、演奏シーンの描写が独特で、静寂の中に響き渡る力強い音が実際に聞こえてくるような感覚になります。加えて大が真っ直ぐに、のびのびと世界一のジャズプレイヤーへと成長していく様子は気持ちがいいです。大の若さや情熱に感化されて、こちらまで身体が熱くなってきます!
ベルセルク
未完の大作!至高のダークファンタジー!!
それは剣というにはあまりにも大きすぎた。大きく、分厚く、重く、そして大雑把過ぎた。身の丈を超える大剣『ドラゴン殺し』、無くなった左腕の代わりに仕込んだ大砲付きの義手、その他一人で戦争に挑む為に用意された大量の武具、夜な夜な纏わりつく魑魅魍魎を薙ぎ払い、切り倒し、粉砕して進む過酷な旅路。目的はただ一つ!5人のゴッドハンドと名乗る異形の集団!彼らは神か悪魔か!?憎しみと友情を天秤にかけ、彼はまた一つ夜を越える…。戦場の血と泥を産湯に生まれ、傭兵として生き続けたガッツの壮絶な生き様を描く渾身のダークファンタジー!!
まずグロテスクだったり、エッチなシーンもありますが、それを軽く凌駕する絵画の様な絵が凄いです。惨劇とも言える戦闘シーン、それが桁外れの画力のおかげで神聖なモノにも見えてきます。エロいシーンもエロよりも描き込まれた描写に目が行きます。そして日本屈指の重圧なストーリー!色々な伏線も込みで、自分が知る限りではこれ以上ない作り込みがされています。特に主人公ガッツの若き日々を描いた『黄金時代』は至高です!!また、敵味方関係なく生き様が凄いキャラが多いです。あくまで自分の持論ですが、死に様が格好良いキャラクターはメチャクチャ格好良いキャラと言えると思います。
辺獄のシュヴェスタ
魔女狩りによって母を奪われた不屈の少女、エラの壮絶な復讐劇!
舞台は魔女狩りが盛んに行われていた16世紀のドイツ。治療院を営む養母アンゲーリカを無実の罪によって魔女として処刑された少女エラは、『魔女の子』が集うクラウストルム修道院へ更生のためと称して連れて行かれる。そこは修道女たちが神の名のもとに魔女の子を支配し、反抗の意を示せば拷問や処刑が執り行われる、監獄にも等しい恐ろしい場所だった。エラは修道会で出会ったカーヤ、ヒルデ、テア、コルドゥラといった仲間たちと協力しつつ、持ち前の知恵と胆力を駆使して危機を乗り越えながら、魔女狩りを主導した修道会の総長、エーデルガルトへの復讐を誓う。
無実の女性が凄惨な拷問の果てに殺されたり、少女の腕を切断するといったショッキングな描写も多い本作。そんな残酷な世界にあっても、決して何者にも屈さない主人公エラの不屈ぶりこそが、この作品の最大の見どころといっていいでしょう。たった一人の家族が無実の罪で処刑され、自身の命すら危うい極限の状況に追い込まれても、エラは決して絶望しません。どんな窮地にあっても持ち前の頭の良さで危機を乗り越え、表向きは従順な振りをしつつも、胸のうちでは激しい復讐の炎を燃え上がらせているのです。時に傷付き、時に自らの手を汚すこととなっても、復讐を果たすという己の意志を貫くエラの強さは、漫画を読んでいる読者に勇気を与えてくれること間違いなしです!
ぼくらの
命を代償にして動くロボット
夏休みに人が少ない村に合宿にやってきた少年少女15人は洞窟の中で謎の男ココペリと出会う。少年少女にゲームをやらないかという話を持ち掛ける彼に対して、1人を除く14人の少年少女はゲームに参加する為に契約する。彼等が泊っている所に戻ると、そこに突如として巨大ロボットが出現する。14人の少年少女は気づいたらロボットの中におり、1人だけが操縦者として選ばれた。操縦者はなんとなく敵のロボットを倒す事に成功するのだが、自分達が世界の命運を握っている事に、のちのち気づいていく。一回の戦闘につき1人の命が消費される。命がけのバトルで、少年少女達は何を思い、死んでいくのか。世界の為に死んでいく少年少女の生き様が描かれています。
最初は軽い気持ちでゲームをする為の契約でした。しかし彼らが契約したのは1回の戦闘で1人の命を消費するロボットに乗る事への契約でした。彼等は自分の世界を守る為に、相手の世界の代表のロボットを壊していきます。その時に相手の世界の搭乗者を殺すわけです。そこで少年少女達の葛藤があったり、自分の番になった時、彼等の絶望感は何かこちらも考えてしまう描写です。戦闘での負けは自分達の世界が崩壊する事です。少年少女達は命をかけて、自分達の大切な人を守る為に戦います。中には復讐の為にロボットを使おうとしたりする人もいます。それでも彼等は自分なりの答えを導いて死んでいくのです。そこがが見所の1つです。
ホムンクルス
第六感「トレパネーション」を通して一人の男が辿る悲惨な末路
かつて外資系金融企業で働くエリートだった名越進は、今では一流ホテルとホームレスで溢れ返る公園との境目で、車上生活を送っていた。ある日、医大生・伊藤学が彼に接近し、人間の第六感を目覚めさせる手術・トレパネーションを施術させて欲しいと依頼される。名越はこれを断るが、伊藤が警察官に彼の車の駐禁を取るように仕組んだため、お金のない彼はこれを引き受ける。手術は成功し、これ以降名越は右目を閉じ左目で人間を視ると、異形の形をした「何か」として視ることが可能になる。心に抱える悩み「ホムンクルス」を可視化していく過程で、名越自身も心の内と対峙せざるを得なくなっていく…。
現実世界では特に、誰しも大なり小なり心に悩みを抱えているものです。主人公・名越は心に繊細で純粋な所もあってか、心の叫びに捕らわれ、遂には完全に自分の世界から抜け出せずに悲惨な結末を迎えてしまいます。人でごった返す大都会・東京で「孤独」に生きる彼の心の闇が、次第に明かされる展開がスリリングで、心の悩みと向き合うという点など、現実世界でもリンクする部分もあるため読み手をズルズルと惹き込む作品でもあります。やるせないラストは、モヤモヤとした余韻が残りますが、トラウマやコンプレックスなど、無意識に芽生え避けて通りがちなものと向き合う物語なため、心に響くものがあります。
ホームルーム
サイコパスな先生が恋をした?!
クラスで陰湿ないじめを受ける女子高生・幸子。誰からいじめられているのかはわからないが、いつもある人のおかげで学校に通えていた。それは担任の先生である愛田先生の存在だ。彼はいじめられている幸子に優しく、助けてくれた。学校でも人気者で、いつでも正義の味方。ある日、幸子の椅子に接着剤を塗られるいじめが発生した。それを愛田先生が解決した夜、いつものように先生は家に帰っていた。ふと道端に目をやり”あるもの”を捨てた、、、なんと、それは接着剤だった!そうこれはサイコパスな先生が恋をした物語だった!しかし事態はそんなに簡単ではなく。
最初からサイコパス感全開な愛田先生が見られるのも、もちろん面白いですが、それだけでは終わらない。結局普通の人間なんていないということが分かります。ただのサイコパス・ラブな物語ではなく、もはや誰が普通なのかわからない、そんな漫画です。誰かを好きになり、守りたいという思いが、人間を狂わせているなと感じます。また登場人物がクセがありすぎる。過去に色々ありすぎるし、現在進行形でおかしな人間ばかりです。学校が舞台のため、表立っておかしなことが起こるわけではありませんが、裏ではドロドロの人間模様が描かれています。それもまた面白くて、早く次の話を読みたいと思ってしまいます。
ホーリーランド
青春の聖地で魂をぶつけ合う、少年達の本格的喧嘩物語
いじめを受け不登校となり、家にも学校にも居場所のない高校生の神代ユウ。ユウは本屋で偶然ボクシング本を手に取り、そこに書かれていたパンチを尋常ではない練習を繰り返し習得する。そして居場所を求めて夜の街に繰り出し、絡んでくる不良を練習したパンチで返り討ちにするうちに、『ヤンキー狩りのボクサー』と呼ばれて噂になる。それを聞きつけ興味を持った『路上のカリスマ』伊沢マサキをはじめとした、様々な街の住人との喧嘩・交流を繰り返すうちに、段々とユウは街を自分の居場所だと思うようになる―――。ボクシング、空手、柔道、剣道、レスリング、拳法etc・・・。あらゆる格闘技が路上で入り乱れる超本格的格闘漫画の決定版!
見所は何と言っても「格闘技描写の説得力の高さ」であろう。作者の豊富な格闘技・喧嘩経験に裏打ちされる解説は、戦闘描写と平行してリアルタイムで「なぜそうなったのか」「なぜ今の攻撃が有効・悪手なのか」を説明する。しっかりとした理論に裏付けされたその解説は読めば読むほど我々を納得させる。本作が「最もリアルな格闘漫画」と呼ばれる所以である。刃牙のような超次元格闘漫画とはまた違った魅力を味わう事が出来る。無論、魅力はそれだけではない。街の住人との交流を通じて、自分の居場所を見つけ、友を見つけ、尊敬出来る者を見つけ、『ヤンキー狩りボクサー』としてだけでなく、人間としても強くなり、成長していく過程がしっかりと描かれていく様子も見所です。
マイホームヒーロー
平凡な生活から一変、愛の為に重ねる罪との葛藤
平凡なサラリーマンの鳥栖哲雄だったが、ある日一人暮らしをしている最愛の娘零花の顔にアザがあることに気づく。彼氏にやられたと考える哲雄の前にたまたま通りかかった不良達が話ている会話が聞こえてきて「れいか」という女の話をしているのを聞き娘の暴力彼氏かもしれないと半信半疑で後をつける。しかし、尾行がバレてしまい不良達の仲間に捕まりボコボコにされその場を去ることになるのだが、その足で零花の家にいき部屋にいるとさっきの男が零花の家に入ってきた。押入れに隠れ様子を伺う哲雄だったが、さっき哲雄に後をつけられたのは零花のせいだと激昂し殺害をほのめかすことを話ている男を前に愛する娘のためその男を殺してしまう。そこへ哲雄の妻で零花の母である歌仙がきて物語が動いて行く。
ミステリー小説マニアの哲雄による死体処理・証拠隠滅や観察力や推理。殺してしまった娘零花の暴力彼氏は実は、組織的に動く半グレメンバーの一員で重要な任務で零花に近づいていたこともあり組織から目をつけられ追い詰められて行く緊張感。殺害した男の父である天才詐欺師との戦いなど、一つの問題をクリアすればまた一つさらに大きな問題が出てくる物語に引き付けられます。さらには物語が進むにつれ最初は普通の妻かと思っていた哲雄の妻である歌仙のどんでもない過去や、序盤から登場していた半グレのリーダー格「窪」の狂気と実力が明らかになっていき目が離せなくなります。
満州アヘンスクワッド
戦前の満州を舞台にしたアヘンをめぐる闘争劇
昭和12年。当時日本の植民地であった中国東北部・満州で、主人公の勇は兵士ととして従軍中に片目を失明。その代わりに嗅覚が以上に発達した。その嗅覚を活かして病気の母を助けるために純度の高い「真アヘン」を作り出し、中国の秘密結社・青幇に売り込むが、逆に捕まってしまう。しかし、そこに現れた謎の美女・麗華に助けられ、利害の一致した二人はアヘンの製造・販売を始めるが、関東軍、青幇、ロシアギャングなどさまざまな敵が彼らを狙う。広大な満州を旅しながら次第に仲間と販路を拡大する勇たちは、この満州で生き残ることができるのか。
主人公側も犯罪者というクライム・サスペンスではありますが、主人公の生い立ちや境遇から、つい彼らを応援したくなります。また、アヘン売人の少女やロシア人用心棒など、次々に多国籍な仲間を増やしていくところが、多民族が入り混じった満州らしい展開だと思います。これが現代の設定だと普通の青年系のクライム・サスペンス漫画なのですが、設定を戦前の中国にして、歴史上の人物を絡めることで、当時の歴史や文化、社会情勢を知ることもできて物語に深みを与えていて、歴史好きにも楽しめる物語です。こうした漫画はどうしても殺人や拷問。性描写が過激になりがちで読みづらいのですが、この漫画は描写がエグすぎない上品さがあって、エログロが苦手な女性にもおすすめです。
マージナル・オペレーション
無職から部隊を率いる戦術オペレーターへ!
主人公アラタは学校卒業後、7年間のニート生活を経て、やっと就職した会社が倒産し職を失う。友人の結婚や子どもの話を聞き、焦りや不安が募っていく。求職中、ネットで民間軍事会社の求人を見つけ、デスクワーク、未経験可、給料の高さに惹かれ応募する。適正テストでは、死刑執行の引き金となる目の前のボタンを押せと言われ、他が戸惑う中、真っ先にボタンを押したアラタ。採用後、海外勤務となり画面の前で、まるで戦術シミュレーションゲームのようなボタンを押すだけの訓練の日々。ある時、普段通り訓練で、状況から敵が村に潜伏していると判断し、村の殲滅指示のボタンを押し、部隊の全滅を回避した。その後、戦闘員からお礼を言われたことで、自分が動かしていたのはゲームではなく、実戦で実際の部隊であったことを知り、愕然とする。
これも一種の成り上がりモノというのだろうか。ニート、無職という底辺から、多くの人に指示を出す重要な仕事に就く。最初の無職の部分では、現代で生きることの難しさを描き、共感しやすく物語に引き込まれていく。その後の適正テストや訓練から徐々に主人公の非凡さが際立っていき、ワクワクしていく。他では使いものにならないと言われた人が、別の業界ではトップ成績を飾る、現実にこういうことはある。だからこそ、夢があり感情移入して読める大人向けの作品である。自分の判断で死人が出るため、緊張感が常にあり、先の展開が読めず、そして命の重さを考えさせられるハードな現実に主人公が葛藤し、足掻いていくのを応援したくなる。
土竜の唄
潜れ土竜!挙げろ悪の権化轟周宝!
交番勤務の問題児である菊川玲二。うだつの上がらない毎日の中でひょんなことから表向きは問題行動による懲戒免職という形で警察を首になったように見せかけて、実はヤクザ専門の潜入捜査官・通称モグラになることになる。その目的は広域暴力団で日本一凶暴なヤクザ組織と言われる数奇矢会のトップ轟周宝を捕まえること。そのため数奇矢会阿湖義組組員になるのだが、玲二の普通のヤクザ者とは違う動きと持ち前のど根性とドスケベパワーで数々の修羅場を潜り抜け、思いがけず出世していくことに。最終最大の目標である轟周宝に近くがなかなか尻尾を見せない。兄弟分で曲がったことが大嫌いなクレイジーパピヨンこと日浦と共にさらになる修羅場を乗り越え、玲人は果たして轟周宝を挙げることができるのか?!
ド派手なヤクザファッションと普通では考え付かない玲二の喧嘩殺法も見どころです。さらに兄弟分のクレイジーパピヨンの刺青や飛行機なども次はどんな柄なのか気になり出します。玲二の最終目標は轟周宝を捕まえることですが、ドスケベ玲二の潜入捜査官になってからの同僚の若木純菜との恋愛事情も目が離せません。最終目標に近づくにつれ、どんどん手強くなってくる登場人物達や明かされる轟周宝の悪の親玉になるまでの幼き頃からのストーリー、最強の息子・轟列雄など玲二に襲いかかる試練・修羅場を持ち前の起点と観察力と、最後には玲二の中心パワーであるドスケベパワーで解決して行く様は爽快です!
モンキーピーク
製薬会社に待ち受ける山の恐怖
藤ヶ谷製薬会社の社員は、新社長の提案によりレクリエーション活動として登山をすることに。そのレクリエーションの目的は藤ヶ谷製薬が起こした薬害問題後の会社の状況や社員の様子を見かねて、新社長が社員を団結させるために企画したものだった。やる気満々の新社長とは裏腹に、やる気がない社員もチラホラいるなかで。登山について、一人だけ特別な想いを持っている男がいた。その男は営業職の早乙女。営業として明るく元気に立ち振る舞う彼であったが、彼が抱える過去と山に一体何の関係があるのか。そして登山中だった藤ヶ谷製薬社員達の前に突如現れた山のモンスターとは一体…。
藤ヶ谷製薬を突如として襲う山のモンスターに対し、山の知識や博識ある者達がモンスターに立ち向かって生き残る様が見所です。フィールドが山であるがゆえ、地上とは違い山に関する知識が必要とされます。また限られた資源の中、慣れない山中でサバイバルを繰り広げなければなりません。食料と水、そして敵からの襲撃に対抗する戦法。常に危機的状況の中、あらゆることを考えながら行動していく様子は緊迫感が伝ってきます。一見、無謀と思える状況や場面でもアイディアひとつで危機を乗り越えるシーンは見ごたえ抜群です。そして襲ってくるモンスターの正体とは一体何なのか?について推測しなが読み進めるのも面白いです。
闇金ウシジマくん
踏み入れてはいけない世界
十日で5割という、超高金利な闇金業を営む主人公と仲間たち。主人公は、少年時代に「頭めがけて金属バットをフルスイングできる」と周りから恐れられたいわゆる不良と呼ばれる人間で、ヤクザにも一目置かれる人間。その客(債権者)達は、一般人、フリータ、風俗嬢と様々だが、主人公(その仲間)から、金を借りたことをきっかけに一部例外を除いてみな転落していく。タイトルは「~くん」で始まり、各エピソードでは債権者やどうしようもない性格や関係者の人間関係、社会の暗い部分を織り交ぜ、主人公は債権者たちを追い込んでいく。
人間がいかに追い込まれていくかという人間描写が秀逸。ほぼすべてのエピソードがバットエンドだが、もしかしたら結末が現実にあり得るんじゃないかと思わせるところがあり、読み終わった後、人生について考えさせられる。時折出てくる、ヤバイ人たち(やくざや半ぐれ)は実在のモデルがいたり、エピソード内の事件は実際に起きたことを落とし込んでおり、妙な生々しさを感じる。ストーリーの後半、因縁のあるやくざとの抗争のあたりは、ほぼファンタジーだが、主人公が追い込まれている様子は債権者を追い詰めていたのとは逆の緊張感があり、目が離せません。
雪人 YUKITO
田舎から出てきた最強の復讐人
警察である父を暴力団によって殺された少年の雪人は自身も警察官になり、その暴力団の情報を探していました。やがて、母が病気で亡くなってしまうと雪人はいよいよ身寄りがなくなりひとりになります。そして、母からは復讐を止められていましたが、母が亡くなった今、ついに復讐をしようと仕事を辞め上京を果たします。東京のいかがわしいぼったくりバーでキャッチ役をしていたある少女に出会い話が進んでいきます。そのぼったくりバーは雪人が暴力団の情報を手に入れるためにわざと入ったお店でした。キャッチの女の子はただならぬ雪人の雰囲気に普通の客との違和感を覚え、雪人に興味を抱きます。雪人は女の子やいろいろな人の情報をひとつずつ手繰り寄せ……。
雪人は暗い過去を持ち、父が殺された瞬間からずっと復讐することが頭から離れない少年時代を送りました。しかし、人間的にはとても優しく思いやりがあり人に親切です。一見すると、まさかそんなすごいことを考えているとは思えないくらい素朴でのんびりした青年です。そんな雪人の真っ直ぐで優しい性格に周りの人間は命の危険を顧みず、協力をしていきます。見所と言えば、雪人があらゆる情報を手繰り寄せ、また頭を働かせていろいろな情報から一つの答えを導き出すような捜査のようなところが面白かったです。あとは、キャッチで出会った女の子は最後まで協力してくれますが、女の子が雪人の事を完全に好きになっている感じもおもしろいです。
LIAR GAME
究極の心理戦バトル!騙し合いの壮絶なゲームが幕を上げる!
人からバカ正直と呼ばれる平凡な女子大生・ナオ。そんなナオの元にある日、身に覚えのない小包が送られてくる。小包と一緒に送られてきた手紙には「おめでとうございます。あなたは10万分の1の確率をくぐりぬけ、ライアーゲームにエントリーされました」の文字が。そして、送られてきた小包を開けると、そこには一億円が入っていた!強制的にライヤーゲームに参加することになったナオだが、騙されやすい性格から顔見知りの先生に裏切られて一億円を奪われてしまう。絶望したナオは天才詐欺師の秋山に助けを求め……‥。誰を信じ、誰と手を組むか?!互いの思惑が入り乱れる騙し合いの泥沼ゲームが幕を開ける!
この漫画の見所はなんと言っても高度な心理戦です!誰を信じて、何を信じれば良いか分からない泥沼の環境下で、お互いの裏を読み合う駆け引きはゾクゾクします!対決ごとに変化するゲームでは絶対に予測不可能な結末となっており、緻密に織り込まれたストーリーは圧巻の一言です。また、ゲームの内容も個性的なものばかりで、お金を絡めたゲーム内容はリアリティーがあり非常に面白くなっています。ゲーム形式は様々ですが、特に集団戦のゲームは他のギャンブル漫画と比較しても珍しく、ゲーム内容も見たことが無いものとなっています!
リアル
若者の苦悩と戦いを描いたヒューマンドラマ。涙がこぼれる名作バスケ漫画
高校生の野宮朋美はある日バイクで事故を起こし、後ろに載せていた少女に大怪我を負わせたことで学校を退学になってしまう。一方、野宮と同じ高校のバスケ部で、エリート意識を常にもっていた高橋は交通事故で下半身不随になってしまう。野宮はある日、車椅子バスケ選手・戸川と出会う。戸川は元々は短距離走選手だったが、骨肉腫により足を切断。車椅子バスケへと転向した過去を持っていた。様々な立場からバスケに関わる3人の男達。彼らのバスケへの熱い思い、人生における戸惑いが描かれた名作バスケ漫画。
作中でも描かれていますが「車椅子バスケ」は「スポーツ」として社会になかなか認識されていません。そんな中、本作品では車椅子に乗る若者たちの心情描写を加えながら「スポーツ」として車椅子バスケが描かれています。個人的に印象に残っているシーンは野宮と戸川が1on1するシーンです。野宮はあっけなく負けてしまうのですが、戸川が使っている「かっこいい車椅子」に対して「ずるい」と野宮が言います。大抵の場合、いわゆる「健常者」は障害をもつ人に対して「ずるい」と言い放つ事は中々ありません。そのあたりの認識の軽快なズレを戸川が笑うシーンがとても印象的でした。
リィンカーネーションの花弁
前世を掘り起こし、無才と決別!
自らの首を切る事で前世の才能を掘り起こすことができる「輪廻の枝」。歴史に名を残した偉人や著名な殺人者など、「輪廻返り」をすれば前世の才能を現在の自分のものにする事ができる一方、前世でも才能がなければ死ぬだけ…。前世に才能があれば、無才から決別できる一か八かの賭け勝負。誰よりも強く才能を渇望する青年・東耶は才能を欲しながらも自身の平凡ぶりに絶望していた。そんな時、東耶の前にある一人の女剣士が現れる。東耶は「輪廻の枝」を手に入れる時、過去の偉人や殺人鬼たちが蘇る世界へと足を踏み入れていく。
誰もが聞いたことのある偉人や殺人者の名前から、マイナーな偉人達が数多く登場します。特に面白いのは、偉人の才能を使った異能力です。例えば「石川五右衛門の才能=盗む才能」、「宮本武蔵の才能=剣術」、「ニュートンの才能=重力操作」など、偉人達に適した能力が発動されます。才能vs才能の戦いが繰り広げられるのですが、何も戦闘向きのものばかりではありません。中には戦闘向きではなく頭脳戦向きな才能も登場します。才能(能力)のみが登場し、この人物は一体何の「偉人」なのだろう? と考えられる事もこの作品の面白いところです。また、前世の才能に振り回される少年少女達の深層心理も強く表現されており、戦闘以外も楽める作品です!
リクドウ
その拳は何のために?!少年は居場所を探しリングに上がる!
借金取りの元プロボクサー・所沢京介は借金の回収のため、芥生の家へと取り立てに来ていた。しかし、そこには首を釣って絶命している男と、その死体を殴っている息子・芥生リクの姿が?!孤児院へと送られたリクだったが、そこで初めて愛に触れる。大切なものをもう二度と失わないため、リクは所沢から拳の握り方を教えてもらう。理不尽に満ちたこの世界ででリクは何を思い、誰のためにその拳を振るうのか?血塗られた道を歩む男の壮絶なボクシング人生!
リクの歩む人生、そして試合中の攻防など、手に汗握る展開が止まりません!特にリクからは異常な狂気を感じ、試合時のリクの表情などは非常にゾクゾクします!対戦相手や登場するボクサーからも殺気がビンビンに漂っており、試合時では興奮すること間違いなしです!また、絵の描写が非常に綺麗で、試合中の鬼気迫る表情や緊張感、細かな体の動きまでが伝わってきて、まるで自分がリングに立っているような臨場感があります!
理系が恋に落ちたので証明してみた。
AIでも不可能な恋愛を本気で論理、統計、確率で証明する無謀なラブコメ!
彩玉大学の大学院1年生の氷室菖蒲(ひむろ あやめ)は同学年の雪村心夜(ゆきむら しんや)に言い放った。「わたし、雪村くんのことが好きかもしれない。」この一言から始まる数値や理論で証明しないと気が済まない理系人間たちが様々な定義や数値を駆使しながら、本気で恋愛を理論的に証明していくラブコメディ。氷室と雪村が属している研究室「理工学研究科 池田研究室」のメンバーを巻き込み様々な実験や実地調査等を行い、本気で「好きの定義」とは何なのかを追究していく。恋愛とは感覚的なものという常識を覆す真の理系人間たちの無謀な挑戦が始まるのであった。
恋愛という不確定要素を様々な観点から数値や論理に当てはめていく様が非常に面白い作品です。学生時代に少しでも理系だった人から見ると聞いたことがある定義や数値の話などもあり納得しつつクスっと笑ってしまうような物語です。かと言って理系の人たちだけが楽しめるかと言われるとそうでもなく、言葉のチョイスやストーリーの展開の仕方であったりと文系だった人が見ても楽しめます。どちらかというと真剣なラブコメディというよりはギャグ寄りなラブコメディになっています。今後、AIが普及してくるであろう現代において、凝り固まった数学の印象をほぐしてくれるラブコメ作品です。
リボーンの棋士
これを読めば将棋の世界の厳しさがよく分かる!
特に希望もなくフリーター生活を送っていた元奨励会員の安住が、人から勧められてあまり気が向かないながら参加したとあるイベントでエキシビションながら現役のプロ棋士に勝利したことで、再び将棋への熱を取り戻し、編入という形でのプロ入りを目指して精進していくという話。奨励会以外から将棋のプロになるには、アマチュアの大会での実績を積んで編入試験を受けるしかなく、その為に奨励会時代よりも将棋の勉強に励み、色々な大会で好成績を挙げるまでになります。しかし、編入試験を受けられる条件はとても厳しく、プロになるのはそう簡単ではない将棋の世界を元奨励会員の協力の下リアルに描いている。
将棋のプロになる為には奨励会という組織に入り、規定の年齢までに成績を挙げる必要があります。プロになれなかった場合は強制的に退会になってしまい、主人公の安住もその口ですが、一度は諦めたプロへの道を再び目指すことになる安住の姿は将棋ファンにはよく分かり、そうではない人にも将棋の世界の厳しさをうまく伝えています。時には年下ながらプロになった棋士に教えを乞うなどしてプロを目指して精進していく安住には、とても共感できるものがあり、同時にすごく応援したくなってしまいます。決して甘くはない世界にまた足を踏み入れた安住の生き様を是非見届けてください。
ONE OUTS
野球が舞台の天才勝負師!!真の駆け引きとは?
埼京彩珠リカオンズに所属している児島弘道。彼はリカオンズの不動の4番打者だ。リカオンズに入団して21年。新人王、3冠王2回などの実績をもちながら、まだ1度も優勝したことがない。自分には優勝するための何かが決定的に欠けている。その何かを探すために、沖縄でトレーニングに励んでいた。そんな中、沖縄で行われていた賭け野球、「ワンナウツ」に参加することになり、そこで渡久地東亜と運命的な出会いをすることになる。リカオンズの4番、児島は渡久地東亜と真剣勝負をすることになるのだが…そこで児島が気づいたこととは!?
主人公・渡久地東亜のミステリアスな性格、悪魔的な洞察力が魅力で、この人に勝てる勝負師は存在しないのではないか?と思えるほど駆け引きに強い。それに賭け野球の「ワンナウツ」というゲームも非常に面白い設定となっている。渡久地東亜と児島弘道が沖縄で出会ったことにより、リカオンズの運命が大きく変わることとなる。この物語での渡久地東亜の駆け引きは必見です!!ギャンブルが大好きな方、そうじゃない方でも引き込まれるの間違いなし!野球でここまでするか?と思うくらいありえない展開に、夢中になること間違いなしです。
最後に:おすすめ青年漫画100選
なるべくジャンルの異なる作品を集めてみましたが、多少の偏りは勘弁して下さい(笑)
気になる作品があれば是非チェックしてみて下さい!